2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19790332
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大岡 静衣 The University of Tokyo, 大学院・医学系研究科, 助教 (80313097)
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Keywords | ポリオウイルス / 病原性 / 経口感染 |
Research Abstract |
我々は胃酸によりポリオウイルス(PV)が失活することを見出したため、胃酸の影響を受けずに直接小腸へウイルスを導入できる腸溶性カプセルを用いた経口投与法を確立し、改良した。咽頭および小腸からの感染を区別して感染伝播機構を解析する必要性が昨年度示されたことから、カニクイザルにPV強毒株ウイルス液を扁桃に滴下、またはPV強毒株含有腸溶性カプセルを経口投与した。扁桃接種群では、3頭中1頭において、視床の下部にグリオーシス、血管周囲性細胞浸潤、髄膜炎が観られた。腸溶性カプセル投与群では、3頭中1頭において、視床部および脊髄の炎症部位には、血管周囲性細胞浸潤、神経細胞の変性、壊死が観られた。腰髄の脊髄前角では神経細胞の消失像が多くみられ、視床部の神経細胞にPV抗原が検出された。したがって、小腸からの感染は成立することが示唆された。サル小腸へ効率的にPVを導入したにも関わらず、ヒトと比較して圧倒的に感染効率が低いことから、胃酸の影響で小腸へ到達するPV力価が低下するためではなく、自然免疫の種差により扁桃や小腸組織内でのPV増殖効率が変化するためである可能性が考えられる。 ヒトPV受容体(hPVR)発現トランスジェニック(Tg)マウス腸管における継代を繰り返して分離したマウス腸管適応PV変異株は、マウス腸管における増殖性が高い表現型を維持したクローンを得ることが困難であった。強力なマウス腸管適応変異株クローンを得るには、マウス適応と腸管(in vivo)適応の二段階を経る必要がある可能性を考えた。hPVR発現マウス腸管上皮細胞において、より大きなプラークを形成できる変異株のhPVR-Tgマウス体内における表現型を確認したところ、有意な増殖効率の上昇は認められなかった。また、その変異株をhPVR-Tgマウス腸管において継代を繰り返したが、際だって増殖効率が上昇した変異株をクローン化することができなかった。
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