2007 Fiscal Year Annual Research Report
複数のウイルス蛋白質の協調によるユニークな出芽機構の解明
Project/Area Number |
19790341
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
入江 崇 Hiroshima University, 大学院・医歯薬総合研究科, 助教 (70419498)
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Keywords | パラミクソウイルス / 感染症 / 出芽 / ウイルスRNA合成 / 粒子形成 |
Research Abstract |
センダイウイルスの出芽は、他と異なるユニークな特徴を有しており、単独でウイルス様粒子(VLP)の形成・出芽能を持つマトリクス(M)蛋白質が、宿主の多小胞体(MVB)ソーティングに関与するAlix/AIPlと機能的に相互作用するだけでなく、アクセサリー蛋白質であるC蛋白質もAlix/AIPlと相互作用し、出芽を促進する(Sakaguchietal.,2005; Irie, et. al.,2007)。 本年度は、C蛋白質による出芽促進機構の解明を目的とし、以下のことを明らかにした。すなわち、C蛋白質のN末端23アミノ酸領域は原形質膜へのターゲッティングシグナルとして機能するが、この働きにより、C末端領域で相互作用したAlix/AIPlが出芽の場である原形質膜にリクルートされる。これにより、宿主のMVBソーティング機構に非依存性であったM-VLPの出芽が、MVBソーティング機構依存性に変化し、この宿主側機構を利用して出芽が促進される。この結果は新しい出芽モデルを提示するものであり、論文発表した(Irie, et. al.、2008a)。 また、C蛋白質欠損組み換えウイルスを用いて、C蛋白質が出芽に重要であることをウイルスレベルで示した。しかし、感染性ウイルス産生は、出芽の低下よりもさらに大きく低下していた。我々はこの原因として、C蛋白質が、感染性ウイルスの産生効率を上昇させるために果たしている出芽促進以外の役割を明らかにした。すなわち、 (-)鎖RNAをゲノムとするモノネガウイルスでは、(-)鎖ゲノムRNAだけでなく、その鋳型となる(+)鎖アンチゲノムRNAがウイルス複製過程で合成される。これらはいずれもウイルス粒子中に取り込まれるため、感染性粒子の産生効率を上昇させるには、(+)鎖よりも(-)鎖ゲノムRNAの合成量を増加させる必要があるが、(+)鎖RNA合成はmRNA合成を含むため、その効率の抑制は必ずしも感染性ウイルス産生効率の上昇にはつながらず適切な調節が必要である。我々は、この制御にC蛋白質が関与していることを明らかにし、論文発表した(Irie, et. al.,2008b)。
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