2007 Fiscal Year Annual Research Report
多段階発がん機構におけるジンクフィンガーホメオドメインタンパク質の機能解析
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19790344
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
中畑 新吾 University of Miyazaki, 医学部, 助教 (80437938)
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Keywords | 癌 / ウイルス / 遺伝子 / ゲノム |
Research Abstract |
成人T細胞白血病(ATLL)はHTLV-1ウイルス感染を基礎疾患としてHTLV-1キャリアの約5%が発症する。発症までの長期期間の必要性、白血病細胞でのTax発現消失等、ウイルス感染に加え、キャリア特質やゲノム変異などの影響が、白血病発症には大きく関連していると考えられる。そこで我々はATLLの統合的ゲノム解析を行いATLL発症機構の解明を行った。その結果、染色体切断点集中領域として10p11、14q11、14q32領域を同定した。10p11の染色体転座点の解析から不均衡転座に伴う共通欠失領域を同定し領域内に存在する遺伝子群の発現解析を行った。その結果、Transcription factor-8(TCF8)遺伝子が正常CD4陽性Tリンパ球に比べて、ATLL細胞においてゲノム欠失・エピジェネティック変化により転写が著しく低下しておりがん抑制遺伝子候補とした。TCF8欠損マウスの解析を行い、その結果CD4+CD8+DP胸腺原発リンパ腫、もしくはCD4+CD8-SP腹水型リンパ腫を形成した。ATLL細胞の一つの特徴としてTGF-betalを産生し、TGF-betalに不能性であること、かつTリンパ球の胸腺内分化過程では、TGF-betalがCD4+Tリンパ球のnegative selectionに寄与していることが知られている。さらにTCF8はSmadタンパク質に結合し、TGF-betal情報伝達系を正に制御する事が報告されているため以下の実験を行った。TGF-betal不能性ATLL細胞株EDにTCF8遺伝子を強制発現させたところ、TGF-betalによる増殖抑制が回復した。また、TGF-betal感受性白血病細胞株CTLL2にTCF8siRNAを導入しTCF8mRNAをノックダウンしたところ、TGF-betalに対する増殖抑制が弱まった。さらにATLL細胞株に5aza-dCやヒストン脱アセチル化阻害剤(TSA)を加え、TCF8の遺伝子発現が上昇するとTGF-betalへの反応性が回復した。TGF-betal欠損マウスはCD4+Tリンパ球が増加する事が知られており、TCF8欠損マウスがCD4+Tリンパ腫を発生させる機構の一部に関わる事が示唆される。従って、胸腺内T細胞の分化選択性に関わるTGF-betalシグナル伝達に対してTCF8遺伝子発現はCD4+リンパ球の選択性に関わることが示唆される。以上、ATLLにおいてTCF8はゲノム異常により不活化され白血病化に関係すると考えられる。
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Research Products
(3 results)