2008 Fiscal Year Annual Research Report
コロナウイルス細胞侵入機構の解明 : ウイルス膜融合蛋白の活性化に伴う構造変化の検出
Project/Area Number |
19790346
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
松山 州徳 National Institute of Infectious Diseases, ウイルス第三部第四室, 主任研究官 (90373399)
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Keywords | ウイルス |
Research Abstract |
マウス肝炎ウイルス(MHV)が細胞に侵入するためには、ウイルス膜と細胞膜を融合させる必要があり、S蛋白がこれを仲介している。S蛋白は連続的な構造変化によって活性化すると考えられるが、詳細なメカニズムは解っていない。今回我々はMHV-2株を用いてS蛋白の構造変化の検出を試みた。MHV-2はS蛋白の活性化にプロテアーゼを必要とするが、プロテアーゼ非存在下では構造変化が途中で止まっていると考えられる。この特徴を利用して、S蛋白の活性化過程を「レセプター結合」と「プロテアーゼ切断」の二段階に分けて解析し、構造変化の検出を試みた。 S蛋白はNative-PAGEにおいて200kDaのバンドとして検出されるが、レセプターと反応させると500kDaの位置に移動した。このバンドは煮沸変性させても500kDaのままであり、非常に安定した三量体であると考えられる。また脂溶性ペプチド近傍を認識する抗体(抗S2A)が、500kDaの三量体のみを認識することから、レセプター結合により脂溶性ペプチドが露出する可能性がある。またSDS-PAGEにおいてS蛋白はレセプター非存在下ではトリプシンにより200kDaから90kDaに切断されるが、レセプター結合により構造変化したS蛋白は65kDaのバンドとして検出された。この結果はS蛋白のトリプシン認識部位がレセプター結合により変化することを示している。これらの結果はMHV-2のS蛋白が膜融合活性を発揮するためには、まずレセプターに結合して一次構造変化を起こし、その後プロテアーゼに切断されて二次構造変化を起こす必要があることを示唆している。
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