2007 Fiscal Year Annual Research Report
アスベスト曝露が引き起こす腫瘍免疫の減衰と悪性中皮腫の発生
Project/Area Number |
19790411
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
前田 恵 Kawasaki Medical School, 医学部, 助教 (20434988)
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Keywords | アスベスト / 悪性中皮腫 / 腫瘍免疫 / MT-2 / IL-10 / TGF-61 |
Research Abstract |
アスベスト曝露を起因とした悪性中皮腫は30~50年の潜伏期間に腫瘍免疫が減衰し発症すると考えられ,本研究ではT細胞へのアスベスト曝露が誘導する免疫学的変化を検討することを目的としている。これまでにヒトポリクローナルリンパ球MT-2株(MT-20rg)を低濃度のアスベスト(chrysotile-B,10μg/ml)存在化で長期間(8ケ月以上)培養して樹立したアスベスト耐性亜株(MT-2Rst)は免疫機能を抑制する抗炎症性サイトカインIL-10の産生が促進するという結果を報告しているため,本年度の研究ではリンパ球の増殖抑制や癌の進展を促すもうひとつの抗炎症性サイトカインTGF-β1に注目し,アスベスト曝露によるサイトカイン産生変化を捉えることにした。はじめに健常人および悪性中皮腫症例の血漿中抗炎症性サイトカイン(IL-10,TGF-β1)をELISA法で測定した。またアスベスト曝露モデル細胞については,TGF-β1産生量の測定,FACSによるTGFβレセプターの発現解析,下流に存在するSmadの発現をリアルタイムRT-PCRおよびウエスタンブロッティング法によって解析した。TGF-β1刺激による細胞増殖についてはチミジンの取り込みで測定した。中皮腫症例血漿IL-10およびTGF-β1は健常人に比べて有意に高値であった。モデル細胞MT-2Rst亜株はTGFβ1を著しく産生しており,Smad3,Smad4の遺伝子発現が有意に低く,TGF-β1刺激に抵抗性であった。この結果から,MT-2Rst亜株はTGFレセプター/Smadを介したTGFβ1増殖抑制シグナリングが低下していると推察され,TGFβ1を産生している中皮腫担癌症例ではMT-2Rst亜株類似リンパ球が誘導されており腫瘍免疫の減衰が生じている可能性が示唆された。
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Research Products
(7 results)