2008 Fiscal Year Annual Research Report
アスベスト曝露が引き起こす腫瘍免疫の減衰と悪性中皮腫の発生
Project/Area Number |
19790411
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
前田 恵 Kawasaki Medical School, 医学部, 助教 (20434988)
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Keywords | アスベスト / 悪性中皮腫 / 腫瘍免疫 / MT-2 / IL-10 / TGF-β1 / 制御性T細胞 / CXCR3 |
Research Abstract |
アスベスト曝露を起因とする悪性中皮腫発生過程にアスベスト曝露を受けた免疫担当細胞による腫瘍免疫低下が関与していることを実験的に解明することを目的とした。前年度に, HTLV-1不死化T細胞株MT-2(MT-2Org)にクリソタイルを低濃度(10μg/ml)長期(8ヶ月以上)曝露しクリソタイル耐性を獲得したMT-2Rst亜株は免疫抑制性サイトカインTGF-β1産生が促進しており, TGFレセプター/Smadを介するTGF-β1増殖抑制シグナリングが低下していること, 並びに悪性中皮腫症例における血漿TGF-β1が高値であることを示した。そこで本年度は, TGF-β1により誘導され腫瘍免疫を抑制し腫瘍の増殖を促す制御性T細胞について, 悪性中皮腫症例の末梢血単核球における割合をFACSにより測定した。その結果, 健常人と比べて悪性中皮腫症例における末梢血CD4^+CD25^+Foxp3^+制御性T細胞数に有意差は認められなかった。またアスベスト曝露が誘導するTGF-β1産生促進機構を解明するために必要なMT-2RstのTGF-β1ノックダウン株をshRNA法により樹立できた。一方, アスベスト低濃度長期曝露により発現変動した遺伝子を同定するため, Mr-2OrgとMr-2Rsts(6株)を用いてDNAマイクロアレイ解析を行い, Mr-2Orgに対してMT-2Rstsで2倍以上有意に発現変動した遺伝子を162同定することができ, Patyway解析とNetwork解析の結果, 抗腫瘍免疫低下を示すマーカー遺伝子としてTh1型T細胞に発現しているケモカインレセプターCXCR3発現低下を見出せた。本研究により検出されたTGF-β1とCXCR3は予防医学的にアスベスト関連疾患の抗腫瘍免疫を予測する早期診断マーカーとして応用が期待されるとともに, アスベスト曝露を介した発現調節機構を解明する重要性が益々高まった。
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