2007 Fiscal Year Annual Research Report
水俣病被災地域の社会的環境と健康度に関する社会疫学研究
Project/Area Number |
19790412
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
牛島 佳代 Fukuoka University, 医学部, 助教 (10336191)
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Keywords | 水俣病 / 健康度 / Well-being / ソーシャルキャピタル / 健康格差 |
Research Abstract |
不知火海沿岸地域において発生した水俣病は、公式確認から今年で52年目を迎える。水俣病の特徴は、第1に、メチル水銀に汚染された魚介類を多食した個人のみならず、食を共にした「家族」や「地域」の全体に影響を及ぼした「集団の病気」であること、第2に、長期にわたって補償問題が未解決であることに起因するさまざまな社会的要因がこの疾患の地域的分布のばらつきに影響していることにある。したがって、不知火海沿岸地域住民の健康やWell-beingを考える際には、メチル水銀曝露による健康障害という個人レベルの要因に加えて、社会的に構築される社会環境や地域社会といった関係や文脈要因について検討することが必要である。そこで本研究では、社会的環境としてのソーシャルキャピタルに着目し、それが住民の健康とどのような関連があるのかを分析する。これにより、地域ごとの健康格差是正のためにソーシャルキャピタルの向上に向けた具体的な支援策を提示するのが、本研究の目的である。 今年度は、不知火海沿岸地域(熊本県芦北町、津奈木町、水俣市、天草市御所浦町、鹿児島県出水市、長島町)の住民全体を対象にソーシャルキャピタルと健康に関する大規模サンプリング調査を実施した。ソーシャルキャピタルの測定については、WalesのCaerphilly county boroughを研究しているFoneらなどが使っているNeighbourhood Cohesion Scale (地域凝集性指標)の指標を利用した。その結果、水俣病補償者(認定患者と1995年の政治解決での医療手帳対象者のうちの生存者)割合が低い地域において、もっとも地域凝集性が高く、健康度も良好であることがわかった。今後、この関連について詳細な分析を進めて行く予定である。
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