Research Abstract |
1990年と1993年から開始されているコホートにおける,質問票に回答した40歳以上70歳未満(調査開始時年齢)の男性約5万人を対象とし,追跡期間中に発症した前立腺がん罹患例とそれに対する適切な対照例を,年齢,居住地,採血年月日,採血時間,空腹時間をマッチングして選択し,コホート内症例対照研究を行った。2004年12月31日までの追跡期間中に前立腺がんを発症した201名の,コホート研究開始時の血液サンプルについて,平成19年度は,血漿中イソフラボン類の分析を行った。その結果,ゲニステイン,ダイゼイン,グリシテイン,イコールの血漿中濃度の中央値(ng/ml)は,症例で,89.3,37.0,2.8,3.7,対照で,86.2,35.5,2.6,4.7,であった。今後は,この測定値をもとに,1)質問票から得られる,喫煙習慣,飲酒習慣,前立腺がんの家族歴,BMI,食習慣などを交絡要因として調整した上で多変量解析を用いて,血漿中イソフラボン類濃度と前立腺がん罹患リスクの検討。2)血漿中イソフラボン濃度と喫煙,飲酒などの生活習慣やBMIとの関連の検討。3)イソフラボン含有食品以外の食品と,血漿イソフラボン濃度との交互作用について解析し,血漿イソフラボン濃度に影響を与える食品の有無の検討,を行う。この研究により,血液中イソフラボン濃度が高いことが前立腺がんに予防的な効果を示していることが示されれば,近年発生率が増加しつつある前立腺がんの予防に役立つ情報となる。また,生活習慣や食事と血液中イソフラボン濃度との関連が示されれば,血液中イソフラボン濃度を低下させるような生活習慣や食事は,前立腺がん予防の観点から避けた方がよいことが示唆される。血液中イソフラボン濃度と内因性ホルモンとの関連が示されれば,イソフラボンの予防効果のメカニズムを明らかにすることも可能である。
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