Research Abstract |
研究代表者らは最近,多数のポリフェノールやビタミン等について,それらのがん転移抑制活性を比較検討したところ,緑茶成分のエピガロカテキンガレート(EGCG)に極めて強い抑制活性を認めた。緑茶カテキンには,EGCGの他にも数種のカテキンが知られている。本研究では,まず,EGCG,ガロカテキンガレート,エピカテキンガレート,エピガロカテキンのがん転移抑制活性を,マウスcolon26-L5結腸がん細胞の実験的肺転移モデルを用いて比較検討した。その結果,EGCGが最も強力な抑制効果を示すことを明らかにした。ガロカテキンガレートはEGCGより弱く,エピカテキンガレートおよびエピガロカテキンは抑制効果を全く示さなかった。EGCGの作用部位を明らかにするため,EGCGの投与をがん細胞を接種する前後に分けて行い,がん転移抑制効果を比較検討した。その結果,前投与の方が高い抑制効果を示した。そこで,EGCGの抑制効果における免疫系細胞の関与を明らかにするために,抗アシアロGM1抗体あるいは2-クロロアデノシンで処置したマウスを用いて,EGCGをがん接種前に投与した時のがん転移抑制効果を検討したところ,前者ではEGCGの抑制効果は消失したが,後者では未処置マウスでの場合と同等の抑制効果を認めた。一方,EGCGの投与によるマウス血清中の抗腫瘍性サイトカイン(IFN-γ,IFN-α,IL-12)の濃度に変動は認められず,また,脾臓中のナチュラルキラー細胞の数にも変化は認められなかった。以上,本研究では,検討した4種の緑茶カテキンの中では,EGCGが最も強力ながん転移抑制活性を有することを示した。また,EGCGのがん転移予防効果には,ナチュラルキラー細胞が重要な役割を担っていることを明らかにした。ナチュラルキラー細胞の活性制御については,今後さらに詳細な検討が必要であると思われる。
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