2008 Fiscal Year Annual Research Report
DPCによる包括支払方式を事例とした科学的知識と医療政策の形成に関する実証研究
Project/Area Number |
19790424
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井出 博生 The University of Tokyo, 医学部・附属病院, 助教 (80361484)
|
Keywords | 社会医学 / 医療政策 |
Research Abstract |
医療政策には、しばしば科学的根拠が反映されない。2002年に導入された「DPCに基づく包括支払方式」もこの例に該当するが、本研究では、なぜ科学的な研究の成果が政策に反映されないかについて、政策形成のプロセスを理解し、政策が決定された後のモニタリングについて分析することを目的とした。1年目には定量的な分析を試み、2年目には政策が適切に実行されるためにどのような監視システムが有効であるのかを検討した。監視システムには、大きくは警察的な監視のシステムと火災報知機型の事後的な監視システムに分けられる。理論的にも後者の方が効率的であるが、本研究の結果、日本の医療政策ではしばしばこの監視システムが機能不全に陥るということがわかった。その理由は、第一に、日本の社会システムの中では未だに制度を作るというところに大きな関心が寄せられており、制度の運用を監視するという意識が低いということである。第二に、政策が小規模であり、専門性も高い場合には、監視自体が困難であるということである。更にわが国でしばしば見られるような半官半民の団体により運営される制度・政策では、行政府を監視するよりも監視は一層困難になる。第三に、医療政策の当事者たる医師などの専門家は必ずしも市民の代弁者とはならないということである。また、利益配分が問題となる場合には、利益集団である日本医師会がある程度の影響力を発揮するが、医療そのもののあり方、倫理が問題になるような場合には、組織化されていない専門家が個人として政策論争に携わることになる。しかし、個人の影響力は限定されたものにならざるを得ず、科学的な知識等が政策に反映される余地は小さい。第四に医療政策では必ずしも産業政策のように利益配分が問題になることばかりではないので、官僚の規範的態度に対して修正が入らない。これらの知見を基礎として医療政策決定過程と実施を融合する説明モデルを構築した。
|
Research Products
(2 results)