2008 Fiscal Year Annual Research Report
家庭血圧と理想的な環境下における随時血圧との潜在性動脈硬化予測能の比較
Project/Area Number |
19790425
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
寳澤 篤 Tohoku University, 大学院・医学系研究科, 助教 (00432302)
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Keywords | 家庭血圧 / 診察室血圧 / 冠動脈石灰化 / 潜在性動脈硬化 |
Research Abstract |
一般に、住民健診や医療機関等で測定される診察室血圧は、家庭で安静時に測定される家庭血圧と比べ血圧値が高値となることが知られている。また、家庭血圧値は(1)多数回の測定を行い、個人の平均により近付けることができること、(2)血圧測定に対する精神的影響(白衣効果)の影響を受けないこと、等の利点により、循環器疾患の予測能が診察室血圧より高いことが知られている。しかしながら、診察室血圧が十分に安静を保った状態で測定された場合に、どうなるかは不明である。そこで本研究では、疫学研究で用いられるような厳密な診察室血圧と家庭血圧で(1)平均値にどの程度の差があるか、(2)潜在性動脈硬化(冠動脈の石灰化、アガストンスコア10以上を石灰化あり)の予測能に差があるか、について検討した。 診察室血圧は、5分間安静、安静時の会話無し、静謐な環境下で自動血圧測定器(BP-8800 ; オムロンコーリン社)を用いて測定された。家庭血圧は起床後30分以内、排尿後、座位にて最低2分間の安静後で7日間測定された。分析は家庭血圧測定、診察室血圧、冠動脈石灰化の測定を完了した949名について行った。冠動脈石灰化の予測能は多重ロジスティック回帰モデルを用いて分析し、年齢、喫煙の有無、コレステロール、血糖、降圧薬内服の有無を共変量とした。 分析の結果、診察室血圧の平均値(収縮期血圧138.0mmHg、拡張期血圧79.9mmHg)と家庭血圧値の平均値(収縮期血圧138.5mmHg、拡張期血圧80.6mmHg)に差は無かった。また相関も収縮期血圧、拡張期血圧それぞれ0.73、0.73と高かった。一方、1標準偏差上昇あたりの冠動脈石灰化の予測能は、家庭収縮期血圧で最良(オッズ比1.45)であり、診察室収縮期血圧がそれに次いだ(オッズ比1.37)。しかしスクリーニングの精度を示すROCカーブの曲面下面積はほぼ同等であり、診察室血圧を理想的な条件で測定することができれば、家庭血圧に匹敵する臓器障害の予測能がある可能性が示された。
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