Research Abstract |
【目的】85歳以上の超高齢者においては,疾病罹患数の増加や生活機能の低下によって,身体機能の低下が避けられないとされており,いかにして精神機能(認知機能ならびに心理的幸福感)を維持するかが,「サクセスフル、エイジング(幸福な老い)」を達成するために重要な課題である。そこで本研究では,2002年に実施した,超高齢者を対象とした訪問調査(べースライン調査)から5年後の追跡調査を行い,(1)超高齢者における精神機能の経年変化の実態把握,(2)精神機能の経年変化の予測因子の探索を行い,超高齢期における良好な精神機能の維持を目指す介入施策に寄与しうる基礎資料を提出することを目的とする。 【方法】ベースライン調査に参加した,東京都I区に在住する超高齢者ならびに後期高齢者のうち,2007年7月1日時点で同区に居住している者を調査対象者とした。認知機能(MMSE)ならびに心理的幸福感(PGCモラールスケール)を目的変数,生活機能(バーセル指標,老研式活動能力指標),聴覚機能,疾病罹患状況,保健習慣(喫煙,飲酒,食事,運動),記憶愁訴,等を説明変数とした。2008年3月時点で,全対象者のうち約80%の調査が完了した。 【結果と考察】超高齢者群における成果についてのみ記す。5年間で,握力は33.7%,高次生活機能では40.4%と大幅な低下が認められた一方で,認知機能は15.3%,心理的幸福感は13.5%の低下が確認された。このことから,超高齢期では,身体機能と比較して精神機能の低下はより緩やかである可能性が見出された。 平成20年度は,追跡調査完了後,後期高齢者のデータを比較対照としてさらに解析を進めることを予定している。また,超高齢期における精神機能低下を予防するための方策を提案するため,精神機能低下の予測因子の探索に関して解析を行うことを予定している。
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