2007 Fiscal Year Annual Research Report
小児呼吸器感染症に伴う中耳炎の原因微生物の同定に関する研究
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19790442
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Research Institution | Osaka Prefectural Institute of Public Health |
Principal Investigator |
倉田 貴子 Osaka Prefectural Institute of Public Health, 感染症部, 研究員 (70435890)
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Keywords | 健康管理 / 感染症 / ウイルス |
Research Abstract |
乳幼児の上気道感染症は小児科医療の現場でもっとも発生頻度が高い疾患である。鼻漏,喉の痛み,結膜の充血,発熱,頭痛,倦怠感,筋肉痛などその症状や程度は多様である。これらの症状が現れた後,平均3-4日で急性中耳炎を発症することが多く,2歳齢未満の小児の70-80%に急性中耳炎の罹患歴があるという報告もある。急性中耳炎を引き起こす病原因子として,ウイルスと細菌が関与しており,ウイルス性の中耳炎の原因としては,RSウイルス,インフルエンザウイルス,アデノウイルス,パラインフルエンザウイルス,メタニュウモウイルス等が,細菌性の中耳炎の原因としては肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae),インフルエンザ菌(Hemophilus influenzae)などが主要な病原体として知られている。 しかし実際の病原検索においては,中耳炎を発症した時点で耳漏があればそれから細菌が分離されることは多いが,ウイルスの分離培養はほとんどが陰性である。また,耳漏だない場合も多く病原検索は非常に困難である。したがって,実際の日本国内の臨床症例で,どのようなウイルスおよび細菌がどの程度中耳炎の発症に関与しているのかは詳細には明らかになっていない。以上のことから,本研究では,中耳炎に先行する上気道感染症を呈した小児および中耳炎を発症した小児から採取したサンプルを用いて,上気道感染するほぼ全てのウイルスと細菌類を対象としてmultiplex RT-PCR(reverse transcriptase polymerase chain reaction)およびnested PCRや細菌分離と菌の生化学性状の検査によって原因微生物の同定を行い,急性中耳炎におけるそれらの種類と全体に占める割合を明らかにすることを目指す。 平成19年度は,上記のウイルスを対象としたMultiplex nested PCR法について既報の論文をもとにプライマーおよびPCR条件の改変を行い,それらの条件におけるPCRの検出感度を決定した。この系を確立したことで,目的とする中耳炎の原因ウイルスの大部分が検出できるようになることが期待される。
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