Research Abstract |
この1年の間に, 2箇所の都道府県から依頼され, 虐待が疑われた児童の診察・損協鑑定・書類作成および裁判での証言などを約20件行った。そのような実践を通して, 子ども家庭(相談)センターの児童福祉司や臨床心理士, 小児科等の臨床医師, 警察および検察, さらに弁護士等と関わり, 信頼関係を構築しつつ, 児童虐待問題へ臨床法医学者が介入することの意義を訴えてきた。そのため, 徐々にその活動が認識され, 各方面から講演や原稿等の依頼が増加してきた。 そして, 医学あるいは臨床心理学関係の学術雑誌および書籍に論文を投稿し, 法医学と臨床医学あるいは臨床心理学との連携の重要性および必要性などを訴えたことで, 関心を示したり, 協力を申し出たりする関係職種が徐々に増えてきた。 さらに, 年2回, 都道府県警察本部や警察学校で催される警察官の法医研修において, 児童虐待の事例について講義を行い, 各事例での対応の問題点などを具体的に示したことで, 各関係機関が改善せねばならない点を明確にし, 今後のより良い対応を考える機会を提供し得たと考える。 このように, 損傷鑑定や裁判提出書類作成などを日々の業務とする法医学者が児童虐待に関わっているケースは国内でも限られており, 多専門職種が対等の立場で, 児童の心理面にも配慮した対応を行うシステムが構築できれば, モデルケースとしてその有用性を広く示すこともできると考える。したがって, 今後は多職種のネットワークを確固たるものにすべく, 勉強会や症例検討会などを積極的に開催すること, 児童に'二次被害'を経験させない対応を具体的に検討していくことが課題であると考える。
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