Research Abstract |
新旧混在する打撲傷(皮下出血)を客観的に評価するために, 測色学的評価と超音波診断装置を用いた皮下出血の深度と厚みとの関連性について検討した. 具体的には, 前年度と同様に, 測色学的評価における三刺激値グラフのピークにおける経過時間と測色値, 540nmと570nmにおける分光反射率の変化グラフのピークにおける経過時間などの因子について, 超音波診断装置を用いた皮下出血の平均皮下深度, 最大出血厚の2因子との関連性を調べた. 当初から予想されていた問題として, 日常生活における転倒などの小児の打撲傷は軽傷な場合が多く, 治癒が早いので経時的変化のデータが不十分な症例もあったが, 平均皮下深度は, 三刺激値グラフのピークにおける経過時間と測色値, 540nmと570nmにおける分光反射率グラフのピークにおける経過時間などのいずれの因子とも有意な関連性は認められず, 最大出血厚は, 測色値の1因子と有意な相関性が認められたが, その他の因子との関連性は認められなかった.従って, 皮下軟部組織浅層にとどまる軽度〜中等度レベルの皮下出血であれば, 測色学的評価に大きな影響を与えないと考えられた.もっとも, 高度な皮下出血の症例については, 今後も研究を継続してデータを集積する予定である.また, 紫外線撮影装置を用いた陳旧な打撲傷における測色ポイントの選択については, 軽傷な打撲傷は明瞭な観察が困難であることが判明し, 原因として治癒に伴う皮下出血の吸収が良好であるために紫外線波長に反射しにくいことが考えられた.紫外線を用いた陳旧な打撲傷の観察・撮影ついては, 更なる条件の検討が必要であるが, 生体における高度な皮下出血の症例はもちろんのこと, 今後は法医解剖症例への応用を計画している.
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