2007 Fiscal Year Annual Research Report
椎骨動脈破裂の法医病理学的診断法の確立-内因性,外因性の機序の解明と鑑別-
Project/Area Number |
19790448
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
呂 彩子 Keio University, 医学部, 助教 (50296555)
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Keywords | クモ膜下出血 / 脳動脈解離 / 椎骨動脈解離 / 法医病理学 / 頭部外傷 |
Research Abstract |
本研究は,頭蓋内椎骨動脈破綻によるクモ膜下出血の内因・外因の法医学的鑑別法の確立が目的である.初年度となる本年は,主として内因性の椎骨動脈解離によるクモ膜下出血の疫学的・病理学的特徴について考察した.内因性頭蓋内椎骨動脈解離によるクモ膜下出血44剖検例のうち8割は男性であり, 30-50代が多かった.背景因子として肥満,高血圧が約半数にみられた.破綻血管の左右差はなかった.前駆症状が4割にみられるとともに,過去の解離を示唆する器質化血栓が20例にみられた.病理学的特徴として,全例に中膜平滑筋の融解壊死と内弾性板のノコギリ状変化が認められた.結果から,頭蓋内動脈解離における多発性病変の存在と,その原因としての血管の脆弱性につながる先行性病変の存在が示唆された.全例に中膜平滑筋の融解壊死が認められたことから,動脈解離発生の重要なひき金であることが強く推察された.検討結果に見られた中膜壊死は,腹腔内動脈解離の原因のひとつであるsegmental arterialmediolysisに類似しており,両者の比較検討が今後の病態解明に重要と考えられた. また,特殊な事例として,死亡直前の交通事故による頭部外傷をともなう椎骨動脈破綻の剖検例を経験した.本例は,椎骨動脈の連続切片の観察によって事故に先行して多発性の動脈解離が発生していたこを証明た.組織所見から内因性の動脈解離により外膜破綻が生じ,クモ膜下出血を発症したため運転を誤り交通事故に至ったものと診断した.頭蓋内椎骨動脈破綻によるクモ膜下出血の法医鑑定において組織学的検索法が有用であることがわかった.
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Research Products
(3 results)