2007 Fiscal Year Annual Research Report
時間周波数解析と共分散構造解析を用いた消化管知覚変容過程の神経科学的検証
Project/Area Number |
19790454
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡辺 諭史 Tohoku University, 大学院・医学系研究科, リサーチレジデント (40431506)
|
Keywords | 機能性消化管障害 / 内臓知覚 / 機能的神経回路 / 催眠暗示 / オキシトシン / 情動制御 / 脳波 / 時間周波数解析 |
Research Abstract |
内臓刺激中に測定した脳波データ、脳機能画像データおよび血中神経化学物質データを用いて、内臓知覚中枢処理過程の時空間パターンとその高次相関を抽出することで機能的神経回路を推定し、機能的連関を調節する物質を特定することが本研究の目的である。本年度は具体的に以下の2つの検証を行った。研究1:消化管刺激中に得られた誘発電位に対して時間周波数解析を行い、消化管知覚の中枢変容を規定する神経活動同期性を特定する。研究2:研究1で同時に採取した血液検体の再分析を行い、内臓知覚の中枢変容を駆動している神経修飾物質を特定する。 対象は成人健常ボランティア12名と成人過敏性腸症候群患者12名であった。直腸を30mAの強度、1Hzの頻度で電気刺激したときに誘発された脳波データを、被験者ごとに催眠暗示文脈の異なる鎮痛、過痛、中性の3つの条件に分類し、内臓刺激誘発電位データベースを作成した。さらに、消化管刺激直後に採取した静脈血18mlを3000rpmで遠心し、血漿を分離し、摂氏-40度にて凍結保存した。凍結保存した血漿から、血漿オキシトシン濃度を測定した。 まず誘発電位の時系列パターンを抽出するため、各電極部位ごとにWavelet変換を行い事象関連同期性(ERS)パワーと位相情報を抽出した。その結果、消化管知覚特異的な時間周波数成分として、150m秒付近におけるgamma帯域ERSとtheta帯域ERSが抽出され、いずれも過敏性腸症候群患者の方で高いERSパワーを示した。さらに催眠暗示は、500m秒付近のgamma帯域ERSを増大させた。次に血漿オキシトシン濃度と内臓知覚の催眠変容効果との関連を検証した結果、催眠変容の少ない個体ほど消化管刺激誘発の血漿オキシトシン濃度が高い傾向が示された。 以上より、内臓知覚過敏に特異的な脳波の時間周波数成分を特定でき、この中枢変容過程を媒介する神経化学物質としてオキシトシンの役割が示された。
|
Research Products
(17 results)