2008 Fiscal Year Annual Research Report
質量分析を用いた血中変異SPINK1測定系による膵癌早期診断への挑戦
Project/Area Number |
19790467
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
粂 潔 Tohoku University, 病院, 医員 (30431563)
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Keywords | 膵癌 / 遺伝子変異 / SPINK1 |
Research Abstract |
膵分泌性トリプシンインヒビター(SPINK1)は、膵腺房細胞で生成される内因性のトリプシンインヒビターであり、異常に活性化されたトリプシンを速やかに不活化し、生体を防御する安全装置と捉えられている。SPINK1遺伝子変異の保有者は若年より膵に潜在的な炎症を繰り返すことで、膵癌発生の高危険群となる可能性がある。そこで我々は膵癌症例を対象にSP工NK1遺伝子の変異解析を行った。その結果、健常者に比べ、膵癌患者においてSPINK1遺伝子変異が有意に高頻度に認められた。膵癌は現行の画像検査では75%以上がStage IVという進行癌になってから診断されており、早期診断法の開発が急務である。今回得られた知見は、SPINK1遺伝子変異解析による膵癌高危険群の設定が、膵癌早期診断に有効である可能性を示唆するものである。しかしながら、遺伝子解析による変異の検出には多大な経費や時間、労力を要するため、遺伝子異常の簡易かつ効率的な検査法の開発が望まれる。そこで、さらに我々は本邦で2番目に主要な変異であるIVS3+2T>C変異でエクソンスキッピングを生じることに注目した。本変異はエクソン・イントロン境界領域の配列変化によるスプライシング異常を生じ、エクソン3のスキッピングを起こすと推測される。そこで、RIA法により血清中のSPINK1蛋白の濃度を測定したところ、IVS3+2T>C変異症例において、血清中SPINK1が異常低値を示すことを明らかとなった。また主要な変異であるN34S変異については、血清より免疫沈降によりSPINK1を分離精製し、質量分析により解析中である。採取が容易な血清を用いてSPINK1を解析することにより、本変異を有する膵癌高危険群を同定することが期待できる。
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