2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19790474
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
大谷 昌弘 University of Fukui, 医学部, 助教 (20372500)
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Keywords | 胃癌 / エストロゲン / エストロゲン・レセプター / ヘリコバクター・ピロリ |
Research Abstract |
【研究の目的】胃癌の罹患率は男性の方が高く、女性の約2倍とされている。疫学的研究では女性ホルモンが胃発癌に対して抑制的に働く可能性が示唆されているものの一定の見解は得られてはいない。ガストリントランスジェニック(INS-GAS)マウスはH. pylori(HP)感染により感染7ヶ月後に胃癌を発症し、その発癌はヒトと同様に雄マウスで有意に高い。我々はこれまでにHP感染INS-GASマウスによる胃炎と発癌は卵巣摘出により促進され、また女性ホルモンの17β-estradio1投与により抑制されることを報告した。本研究ではその炎症抑制機構の一端を明らかにするために、estrogen receptor(ER)α、βのサブタイプに注目し、HP感染INS-GASマウスにそれぞれER agonistを投与する動物実験を計画した。 【研究実施計画】雌INS-GASマウス下記の5群に分類して、5ヵ月のHP感染実験を行い、HPに対する免疫血清学的検討、胃組織におけるサイトカイン発現等を用いて評価した。 (1)非感染群(2)HP感染群(3)HP感染卵巣摘出群(4)HP感染卵巣摘出+ER α agonist投与群(5)HP感染卵巣摘出+ER β agonist投与群 【成果】(1)血清を用いたTH1/TH2バランスの検討ではHP感染群間で差は認めなかった。 (2)胃組織におけるTNF-αmRNA levelは、HP感染群は非感染群で有意に亢進していた。HP感染卵巣摘出+ER α agonist投与群のTNF α mRNA levelはHP感染卵巣摘出群と比べて有意に高値であったが、HP感染卵巣摘出+ER β agonist投与群においてはHP感染卵巣摘出群と差を認めなかった。 胃炎の発症においてERは血清学的なTH1/TH2バランスに影響を与えなかったが、胃粘膜においてサイトカイン発現調節に関与している可能性が示唆された。この様な視点からの研究は報告されておらず、更なる検討により胃発癌機構調節に関する新しい知見を得られる可能性がある。
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