Research Abstract |
【目的】我々は,以前より消化器癌(胃癌・大腸癌・膵癌など)の発生・進展における胃型・腸型形質発現の重要性を報告してきた。近年,細胞分化の観点から上皮・間葉相互作用の重要性あるいは癌の発生、進展における間葉組織の役割の重要性が指摘されている。本研究の最終的な冒標である大腸型・小腸型形質発現を規定する因子の同定のため,今年度は,消化器の器官形成に多彩や役割を果しているbone morphogenetic protein(BMP)-4に注目し主に胃癌組織で形質発現も含めて検索を行った。【方法】正常消化管(胃,小腸,大腸)および胃癌37例(分化型27例,未分化型10例)にてBMP4の発現を免疫組織化学的に検討した。胃癌については,胃型(MUC5AC,MUC6)および腸型(MUC2,villin)マーカー,腸特異的ホメオボックス遺伝子Cdx2の発現も免疫組織化学的に検討した。【成績】1.BMP-4は,主に正常消化管(胃,小腸,大腸)のmyofibroblastなどの間葉系細胞で発現していた。また,BMP-4発現は腫瘍組織(胃癌など)においても間葉系細胞で確認された。2.胃癌37例(分化型27例,未分化型10例)の検討では,分化型5例(18.5%),未分化型9例(90%)でBMP-4発現が癌細胞で確認された(P=0.0001)。3.BMP-4発現は,胃粘膜内癌の癌細胞では確認されず,胃型・腸型形質発現あるいはCdx2発現とも明らかな関連性が認められなかった。【結論】BMP-4は,主に管腔形成を伴わない未分化型胃癌細胞の進展に寄与している可能性が考えられた。今後は,他のマーカー(BMP-2など)あるいはスナネズミモデルなどの動物モデルでの検討を随時進める予定である。
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