2009 Fiscal Year Annual Research Report
上皮-間充織形質転換の観点から見た消化器疾患におけるプロスタグランジンの意義
Project/Area Number |
19790493
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
谷川 徹也 Osaka City University, 大学院・医学研究科, 講師 (70423879)
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Keywords | 上皮-間充織形質転換 / プロスタグランジン / 15-hydroxyprostaglandin dehydrogenase / 創傷治癒 / 胃癌 |
Research Abstract |
プロスタグランジン(PG)は消化管粘膜創傷治癒促進作用や消化管癌の発生や増殖、進展、浸潤、転移に重要な役割を果たしている。しかしながら細胞運動に関するPGの意義については不明な点が多い。一方、上皮細胞が何らかの刺激により間葉系細胞の形態に変化し、それにより運動能などを獲得する現象は、epithelial mesenchymal transition(上皮間充織形質転換、以下EMT)と呼ばれており、粘膜損傷の修復や癌細胞の浸潤、転移能の亢進のメカニズムの一つとして注目されている。組織中PGE2量はcyclooxygenaseを始めとしたPG合成酵素と代謝酵素である15-hydroxyprostaglandin dehydrogenaseにより調節される。本年度は、15-PGDHの発現動態がEMTを調節する因子となりうるかどうかを検討するための予備検討を行い、以下のような結果を得た。 1. 当院にて外科的に切除した胃癌症例71例における15-PGDHの発現動態と予後について検討した結果、15-PGDHの発現低下は、胃癌の独立した予後不良因子であることが明らかとなった。その機序の一つとして、15-PGDHの発現低下が胃癌細胞の細胞増殖を亢進させる可能性が示唆された。 2. 胃潰瘍における15-PGDHの発現動態について検討したところ、胃潰瘍辺縁上皮において15-PGDHの発現の低下が観察された。これはEGF受容体シグナル伝達系を介した機序である可能性が示唆された。 今後、胃潰瘍組織あるいは胃癌における15-PGDHの低下が組織内PG濃度を増加させEMTを介した細胞遊走能の増強により消化管粘膜創傷治癒促進作用や消化管癌の発生や増殖、進展、浸潤、転移を促進させるかどうかについて更に検討を続ける予定である。
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Research Products
(2 results)