2007 Fiscal Year Annual Research Report
慢性心不全患者における心室3点同時ペーシングによる心機能改善の臨床的研究
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19790517
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
関口 幸夫 University of Tsukuba, 大学院・人間総合科学研究科, 講師 (90447251)
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Keywords | 慢性心不全 / 心臓再同期療法 |
Research Abstract |
本研究では、重症心不全患者における通常の2点ペーシング法と3点ペーシング法の急性期における血行動態を比較することで、3点ペーシング法の有用性を認識するとともに、術前にどのような症例に3点ペーシング法が有用であるか判別可能となる予測因子について検討を行った。 対象症例は3点同時ペーシングによる心臓再同期療法を施行した26症例の高度低心機能を有する重症慢性心不全患者(年齢;63±13歳、男性;20人)である(昨年度は21症例に施行)。基礎心疾患としては虚血性心疾患;3人、拡張型心筋症;23人であり、心不全の自覚症状の指標となるNHYA分類がclassIV;12人、classIII;14人であった。左室駆出率は25.4±6.6(range:13-36.3)%と著明に低下しており、心電図におけるQRS幅も186±40(range:125-275)msecと延長していた。これらの全症例に対し2点ペーシング時、3点ペーシング時の急性期血行動態を比較したところ、左室収縮能の指標となるdp/dt値、左室拡張能の指標となるタウ値はいずれもbaselineよりも2点ペーシングにて有意に改善し(dp/dt;745±202→880±208mmHg/s、タウ;68.6±13.0→61.1±11.2msec)、更に3点ペーシングにより2点ペーシングよりも有意に指標値の改善を認めた(dp/dt;880±208→953±180msec、タウ;61.1±11.2→55.0±12.0msec)。また、心電図上のQRS幅や、心エコーから得られる左室同期の指標となるTs-SD値も上記同様3点ペーシングによる値が有意に2点ペーシングによる数値よりも良好な結果が得られた。 続いて、2点ペーシング時のdp/dt値よりも3点ペーシングによって10%以上dp/dt値が改善した症例をresponder(R)群(10例)、10%以下の改善にとどまった症例をnon-responder(N)群(16例)とし、両群を比較することで3点ペーシングに適する症例の予測因子について検討を行った。BaselineにおけるQRS幅、Ts-SD値では、両群間で有意差を認めなかったが、baselineの左室拡張末期容積(R;279±93vs.N;202±63msec,p<0.02)とdp/dt値(R;632±182vs.N;814±184mmHg/s,p<0.02)において両群間で有意差が認められた。以上から、左室拡張末期容積が拡大しており、dp/dt値がより低下している症例には3点ペーシングがより有効であることが示唆された。
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