2008 Fiscal Year Annual Research Report
慢性心不全患者における心室3点同時ペーシングによる心機能改善の臨床的研究
Project/Area Number |
19790517
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
関口 幸夫 University of Tsukuba, 大学院・人間総合科学研究科, 講師 (90447251)
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Keywords | 慢性心不全 / 心臓再同期療法 |
Research Abstract |
本研究では、重症心不全患者における通常の2点ペーシング法と3点ペーシング法の急性期における血行動態を比較することで、3点ペーシング法の有用性を認識し、また有用となる症例の予測因子について検討するとともに、3点ペーシングによる合併症について調査した。 対象は3点ペーシングによる心臓再同期療法を施行した54症例の高度低心機能を有する重症慢性心不全患者(年齢 ; 65±12歳、左室駆出率29±11%)である。これらの症例に対し2点ペーシング時、3点ペーシング時の急性期血行動態を検討したところ、左室収縮能の指標となるdp/dt値においてbaselineよりも2点ペーシングにて有意な改善を認め(dp/dt ; 758±293→826±264mmHg/s(p=0.002))、更に3点ペーシングでは2点ペーシングと比較しdp/dt値のみならず左室拡張能の指標であるタウ値においても有意に指標値の改善を認めた(dp/dt ; 826±264→861±259msec(p=0.001)、タウ ; 65.8±14.9→60.3±15.1msec(p=0.0002))。心電図上のQRS幅、心エコーから得られる左室同期の指標となるTs-SD値も3点ペーシング法において最も良好な結果が得られた。続いて、2点ペーシング時のdp/dt値よりも3点ペーシングによって10%以上dp/dt値が改善した症例をresponder(R)群(10例)、10%以下の改善にとどまった症例をnon-responder(N)群(16例)とし、3点ペーシングに適する症例の予測因子について検討したところ、左室拡張末期容積が拡大しており、dp/dt値がより低下している症例には3点ペーシングがより有効であることが示唆された。 合併症については、冠静脈洞解離 : 2例、創部血腫形成 : 1例、創部皮膚壊死 : 1例、リード位置移動 : 5例、創部感染 : 1例がみられ、慢性期ではペーシング閾値上昇によるペーシング不全 : 1例、リード断線 : 1例、誤作動 : 2例がみられた。 上記のことから、3点ペーシング法は、通常起こり得る範囲内での合併症は認めるものの、適切な症例を選択することにより今後の心不全治療において非常に有効な治療法となりうるものと考えられた。
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