2008 Fiscal Year Annual Research Report
KLF5の細胞特異的機能の解明とKLF5作動薬の新規開発
Project/Area Number |
19790518
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
武田 憲文 The University of Tokyo, 医学部・附属病院, 特任助教 (60436483)
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Keywords | KLF5 / 心線維芽細胞 / 心肥大 / 心筋リモデリング |
Research Abstract |
【目的】高血圧性心筋リモデリングにおける非心筋細胞(線維芽細胞、内皮細胞)の役割が注目されている。転写因子KLF5は、臓器ストレス後に誘導される間葉系細胞の活性化に関与する。KLF5ヘテロ欠損マウス(KLF5^<+/->)では、アンジオテンシンII投与後の心線維化や心肥大が抑制されたが、その病態機序や圧負荷肥大心モデルにおけるKLF5の役割は明らかではない。KLF5遺伝子改変マウスを用いて弓部大動脈縮窄モデル(TACモデル)を作成し、圧負荷後の心肥大や線維化に及ぼすKLF5の役割を検討した。 【方法】(1) 圧負荷肥大心モデルにおけるKLF5発現様式を検討する。(2)KLF5^<+/->マウスに対して圧負荷肥大心モデルを作成し心機能評価を行い、心肥大・心線維化を病理学的に評価した。さらに心筋リモデリング関連遺伝子の発現や、圧負荷初期の非心筋細胞増殖・活性化に与える影響をBrdU assayを用いて検討した。(3) Cre-loxPシステムを用いた細胞種特異的KLF5欠損マウスの作成・解析に着手した。 【結果】(1) 心臓におけるKLF5発現は線維芽細胞で多く(心筋細胞比で約3倍)、圧負荷後第3日で最大となった。心筋周囲の非心筋細胞(増殖部)でのKLF5染色性(発現)が高かった。(2) KLF5^<+/->マウスへの圧負荷肥大心モデルの解析では、KLF5^<+/->マウスで圧負荷後初期の非心筋細胞の増殖が抑制されており(BrdU assay)、圧負荷後の心筋細胞肥大や間質線維化が軽減された。遺伝子発現では、心筋肥大関連遺伝子(βMHC, ANP)や線維化関連因子(endothelin-I, osteopontin, FGF2, CTGF)の発現低下などが認められた。(3) 心筋細胞と非心筋細胞のいずれにおけるKLF5が、心肥大・線維化の形成に重要であるかを明らかとするために、KLF5遺伝子の第2エクソン両端にloxP配列を挿入したfloxマウスを作成し、心筋細胞や非心筋細胞(線維芽細胞)の各々に特異的に発現する各プロモーター(順にαMHC, 遺伝子X)によってCreリコンビナーゼを発現するトランスジェニックマウスとの交配・解析に着手した。心筋細胞特異的なKLF5欠損マウスでは、圧負荷に伴う心肥大と線維化は軽減されなかった。活性化された線維芽細胞特異的なKLF5欠損マウスでは、圧負荷に伴う心肥大と線維化は共に軽減した。 【考察・結論】心臓への圧負荷に伴う心肥大に、心線維芽細胞が重要な役割を担うことを示唆する結果であり、その活性化に転写因子KLF5が密接に関わる。しかしながら、心肥大や心線維化は、圧負荷に対する心組織の適応現症とも考えられ、過度の心負荷条件・病態により、その適応現症は破綻し心不全を来すことが知られる。これらを考慮した心肥大・心不全解析を行うことで、心筋細胞肥大や線維化の適切な制御機構、介入方法を明らかとしたい。
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Research Products
(5 results)