2008 Fiscal Year Annual Research Report
血管病における細胞分化・形質変換を制御する転写調節機構の解明
Project/Area Number |
19790519
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西村 剛 The University of Tokyo, 医学部・附属病院, 助教 (20422305)
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Keywords | 転写因子δEF1 / 転写因子SIP1 / TFGβ / 大動脈弁 / 肺動脈弁 |
Research Abstract |
血管平滑筋細胞は外部の刺激に応じてその形質を劇的に変化させ、動脈硬化などの血管病変形成に主要な役割を果たす。研究代表者は転写因子δEF1がTGFβ刺激に応じて平滑筋細胞の遺伝子発現を制御することを報告した。本研究ではδEF1と近縁転写因子SIP1の機能を解析し、心疾患・血管病態や心血管形成の過程で、平滑筋細胞がどのように外部環境からの情報を受容し、遺伝子発現の調整を行うかを明らかとし、心血管病の治療に役立つ情報を得ることを目標とする。平成20年度は前年度に繁殖を開始したδEF1・SIP1ダブルノックアウトマウスとSIP1コンディショナルノックアウトマウスの解析を行った。先ずSIP1が大動脈・心臓に発現することを見た。SIP1の通常のホモノックアウトマウスは胎生10日で死亡することから、心血管系でSIP1発現欠損を生じるコンディショナルノックアウトマウスを作成した。このSIP1心血管系コンディショナルノックアウトマウスは、半数以上が出生直後に死亡し、このマウスの心臓を調べると、大動脈弁・肺動脈弁が肥厚しており、生後4ヶ月に達したマウスでは大動脈弁位の流速増大、圧較差の存在が見られた。肺動脈弁・大動脈弁の実質を作る細胞は内皮細胞から変化したものと、大動脈弁基部の平滑筋細胞と同様に遊走した神経堤細胞によって構成されることからSIP1がこの形質発現に関与するものと考えた。さらに大動脈弁の形態観察と各種染色を行った結果、弁間質細胞のアポトーシスの低下とコラーゲン産生抑制が弁肥厚の原因と考えられた。現在、細胞レベル・分子レベルでの調査を進めている。ヒトにおけるSIP1の遺伝子欠損では大動脈弁狭窄・肺動脈狭窄などの先天性心疾患が報告されており、また先天性心疾患症例の一部に大動脈弁肥厚が見られることから、この研究がヒトの弁膜症の病態解明・発症予防・治療手段考案につながると考えている。
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Research Products
(1 results)