2007 Fiscal Year Annual Research Report
心不全におけるCa2+ハンドリング機構解明と是正治療の開発
Project/Area Number |
19790529
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
片野坂 友紀 Okayama University, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (60432639)
|
Keywords | Na+ / Ca2+交換体 / カルシニューリン / リン酸化修飾 / Ca2+ハンドリング / 心肥大 / 心不全 / 心筋細胞 / 筋形質膜 |
Research Abstract |
心筋細胞は、生後速やかに分裂能を失い、その後の成長は生理的肥大により行われる。各種心筋症・高血圧性心疾患・先天性心疾患などの病態では、心筋細胞に過剰に負荷がかかり、生理的肥大の範囲を超えて病的肥大を生じることとなる。心肥大は心不全の前段階であり、またさらに虚血性心疾患・不整脈・突然死などを発症させる危険因子でもあることから、肥大を予防・抑制することは、不全発1症を減少させることに繋がる。最近の研究から、肥大リモデリングは、Ca2+依存性脱リン酸化酵素・カルシニューリンの活性化による肥大応答遺伝子群の発現により引き起こされることが明らかとなってきた(Molkentin JD,1998,Cell)。カルシニューリン活性は細胞内Ca2+濃度に依存するため、心肥大・不全発症におけるCa2+ハンドリングの分子機構を明らかにすることは大変意義深い。一般に、筋細胞内Ca2+濃度上昇は、Ca2+流入系の異常のみならず、Ca2+汲み出し系、筋小胞体機能の低下によっても起こりうる。細胞骨格タンパク質異常を示すマウスの小胞体機能を遺伝子操作により改善することで、心不全が劇的に改善されたという報告があるが(Hoshijima M,2002,Nat.Med.)、小胞体機能の改善のみでは心機能不全の改善が見られないケースがあることも最近知られるようになった(Song Q,2003,J. Clin. Inv)。筋細胞膜を介するCa2+流入およびCa2+汲み出し系の異常もまた筋変性疾患の病態発症に重婁であると考えられる。Na+/Ca2+交換体は心筋細胞形質膜における実質上唯一の細胞外へのCa2+排出系であり、細胞のCa2+濃度調節には不可欠である。申請者は、心不全進行過程において、活性化カルシニューリンがNa+/Ca2+交換体の交換活性を阻害するために、細胞内のCa2+が効率的に排出されなくなり、心筋細胞死を介して心不全発症へと繋がることを示した(Katanosaka Y.et.a1.,2005,J Biol Chem)。また、本年度は、肥大時に上昇したカルシニューリン活性が、Na+/Ca2+交換体の本体のリン酸化にどのように影響するか明らかにした(Katanosaka Y., et. Al.,2007,Annu.N.Y.Ac.Sci.)。
|