2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19790552
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井上 彰 Tohoku University, 病院, 助教 (70361087)
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Keywords | 薬剤性肺障害 / 肺癌 / ゲフィチニブ / EGFR阻害剤 / サーファクタント蛋白 |
Research Abstract |
本研究は、肺癌に対する治療薬であるEGFR阻害剤ゲフィチニブによる薬剤性肺障害の発症機序を、in vitroおよびin vivoにおいて解析することを目的としている。 他の急性肺障害においては、肺サーファクタント蛋白がその防御因子として機能していることが既に知られており、EGFRはそれら肺サーファクタント蛋白を抑制するとの報告がみられることから、我々はゲフィチニブによる薬剤性肺障害と肺サーファクタン蛋白との関連性を検討した。 まず初めに、肺胞上皮癌由来の細胞株であるPC3において、ゲフィチニブ曝露時のサーファクタント蛋白のmRNA発現をRT-PCRにて確認したところ、サーファクタント蛋白A(SP-A)のみに有意な減少を認めた。また、C57/BL6マウス(雌、6〜8週齢)にゲフィチニブ200mg/kg/日を7日間連日経口投与し、その間の気管支肺胞洗浄液(BALF)を経時的に採取し、BALF中のSP-AおよびSP-Dをwestern blottingにて確認したところ、SP-Aは経時的に減少傾向を認めたが、SP-Dには変化を認めなかった。 次に、経気道的なLPS投与によりマウス肺に炎症を惹起させた際のゲフィチニブ投与による炎症像の変化を観察した。その結果、ゲフィチニブ非投与マウスでは、LPS投与後にBALF中の炎症細胞数は-過性に上昇を認めるものの、(おそらく肺の防御機構として)BALF中SP-Aの増加が生じ、それらの炎症所見は速やかに改善したが、ゲフィチニブ投与マウスでは、LPS投与後もSP-A増加を認めず、炎症所見が遷延する現象が認められた。肺の病理像においても、ゲフィチニブ投与マウスにおいてはLPS投与後に著明な炎症細胞浸潤の所見が認められた。 上記の結果は、ゲフィチニブによる薬剤性肺障害に肺サーファクタント蛋白(特にSP-A)が強く関わっていることを示唆し、その後のSP-A補充による治療法の検討を支持するものである。
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Research Products
(4 results)