2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19790563
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
遠藤 元誉 Kumamoto University, 大学院・医学薬学研究部, 研究員 (40398243)
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Keywords | 小胞体ストレス / CHOP / caspase-11 / ERAD / アポトーシス |
Research Abstract |
本研究は、炎症と小胞体ストレスの関連を分子レベルで明らかにすることを目的とした。今回、我々はマウスマクロファージ系RAW264.7細胞にリポポリサッカライド(LPS)、小胞体ストレス誘導剤であるタプシガルギン(Tg)およびツニカマイシン(Tm)を投与し、小胞体ストレス経路の活性化の時間経過と、その結果誘導されたシグナルについて解析を行った。RAW細胞をLPSにて刺激したところ、小胞体内でのタンパクの正常な折りたたみを促進する小胞体分子シャペロンBiPの誘導や、正しく折りたためられなかったタンパクを分解へと導くERAD関係の遺伝子誘導を認めた。BiPおよびERAD関係の遺伝子は、小胞体膜上に存在する3つのセンサータンパクのうち、ATF6およびIRE1が主に関与していることが報告されているが、本実験において活性型IRE1によって生じるSpliced XBP1の誘導も認められた。一方、もう一つのセンサータンパクであるPERKの活性化は認められず、LPS刺激による小胞体ストレス経路の活性化は、主にIRE1およびATF6経路を介して誘導されることが明らかとなった。また、転写因子CHOPも、BiPなどにやや遅れて誘導がみられたが、細胞のアポトーシスはほとんど認めなかった。Tg、Tm刺激では、PERKの活性化がみられ、さらに、BiP、ERAD関係遺伝子、CHOPの誘導がほぼ同時に認められ、LPS刺激と比べると細胞のアポトーシスも数多く認められた。LPS刺激では、ほとんどアポトーシスが生じず、またTg、Tm刺激ではアポトーシスが多数生じた理由の一つとして、小胞体膜センサータンパクの感受性の違いが、BiPなどの細胞保護的に働く分子シャペロンとアポトーシスを誘導するCHOPなどのバランスに違いをもたらしている可能性が考えられた。これらの結果より、炎症誘導によって生じる小胞体ストレス経路の活性化と直接的な小胞体ストレス誘導刺激による活性化は異なっており、小胞体ストレス経路の活性化動態は、炎症刺激の場合には細胞死を抑制する機構の働きが大きいことが明らかとなった。
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