2007 Fiscal Year Annual Research Report
_多発性硬化症の免疫病態におけるアクアポリン4抗体の意義に関する臨床・病理学的検討_
Project/Area Number |
19790599
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
三須 建郎 Tohoku University, 大学院・医学系研究科, 助教 (00396491)
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Keywords | 多発性硬化症 / 視神経脊髄炎 / アストロサイト / アクアポリン4 / 炎症性疾患 / 中枢神経系 |
Research Abstract |
<病理学的解析> 我々は、世界に先駆けてOS-MS病巣においてアクアポリン4(AQP4)が欠落していることを報告したが、さらに症例を増やし、OS-MS剖検脳12例、古典型MS6例、対照群におけるAQP4の発現を、免疫組織化学的に比較検討を行った。特に既知のMS抗原候補蛋白である髄鞘蛋白質(MBR,PLP,MOG等)との発現比較解析や、AQP4の発現とアストログリア(GFAP)の関連解析を行った。その結果、NMO病巣においては、AQP4およびGFAPは、病変の早期から慢性期にかけて染色性が低下もしくは消失していたが、髄鞘は早期病変においては、AQP4、GFAPともに脱髄病変部でむしろ発現は亢進しており、明らかにNMOとMSの病理学的特徴は相反するパターンであった。この結果NMOの免疫病態としては、早期からアストロサイトが障害を受けるのに対して、脱髄は二次的に生じている可能性が示唆された。NMOはMSとは異なり、アストロサイトの障害を起因として生じる疾患である事が示唆され、国内外から高い評価を得ており、その成果は2007年5月号のBrain誌に掲載された。 <臨床的解析> 我々は、AQP4強制発現させたHEK293細胞に対する患者血清の反応を見る系で、AQP4抗体の測定を行っている。NMO患者における、感度・特異度は90%を超え、非常に高い疾患特異性を有する抗体である。AQP4抗体価は、NMO患者の再発時の脊髄病変の長さに比例する事、ステロイド治療後には有意に抗体価は減少することなどを明らかにし、NMO診療における基礎を形成している。臨床的抗体価との関連について、Brain(2007年5月号)に掲載された。現在、抗体が作用する病態を明らかにするため培養系を確立する準備を進めている。 これらの結果から、NMOは抗アクアポリン4抗体に関連して発症している事が強く示唆され、その事実を発信し大きくこの分野に貢献できていると考えている。今後は、この抗体の作用機序や治療法の開発などを含めて、さらに研究の発展を続けていく予定である。
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