2007 Fiscal Year Annual Research Report
破骨細胞の自己管理システムと新規化合物による分化制御の分子機構の解明
Project/Area Number |
19790637
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
松本 征仁 Saitama Medical University, 医学部, 講師 (90321819)
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Keywords | 破骨細胞 / p38MAPキナーゼ / 転写因子 / 骨吸収 / pax6 / 活性酸素 |
Research Abstract |
マクロファージから不可避的に産生される活性酸素は,貪食殺菌による生体防御システムに重要であるが,マクロファージ系を前駆細胞とする破骨細胞の分化との相関については不明な点が多い。そこで我々は昆虫Sarcophaga peregrinaから抽出された抗菌物質5-S-GADが破骨細胞への分化を強力に阻害することを見出した。さらに,破骨細胞分化に活性酸素の産生が必須であること,活性酸素の生成酵素NADPHオキシダーゼNox2が5-s-GADの標的である可能性を明らかにした。 5-s-GADによる破骨細胞分化抑制の分子機構を解明するため,RANKL刺激により誘導される様々な破骨細胞マーカー遺伝子の発現を調べたところ、カテプシンK、TRAP、OSCARおよびマスター転写因子NFATc1遺伝子のmRNA発現が顕著に抑制された。この一連の遺伝子発現に必要なp38MAPキナーゼのリン酸化の低下を5-s-GAD処理により認め,MAPキナーゼ上流の分化初期段階において5-S-GADが作用していることが示唆された。重要なことは,5-s-GAD同様,破骨細胞分化が分化初期で活性酸素生成に関与するNADPHオキシダーゼ阻害剤DPIやカタラーゼによって強力に阻害され,この結果は破骨細胞分化に活性酸素の生成が必須であることを示した。実際,RANKL刺激がマクロファージ細胞内の活性酸素濃度を一過性に上昇させ,5-S-GAD添加による阻害が観察された。マクロファージに発現するNADPHオキシダーゼを調べたところ,Nox2の優位な発現を認め,破骨細胞の分化においてNox2依存性の活性酸素の発現が5-s-GADにより抑制されることを見出した。これらの結果より破骨細胞分化に関わる活性酸素生成酵素を標的とする新たな分子標的の調節による破骨細胞が原因となる骨代謝疾患の予防・治療法の可能性が期待される。
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