2008 Fiscal Year Annual Research Report
肝発癌における高インスリン血症およびtuberinの細胞生物学的意義
Project/Area Number |
19790643
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
川口 巧 Kurume University, 医学部, 講師 (00320177)
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Keywords | 肝細胞癌 / インスリン抵抗性 / tuberin / mTOR / 細胞増殖 / インスリン情報伝達経路 / HOMA-IR / 2型糖尿病 |
Research Abstract |
本邦における主要な悪性新生物である肝細胞癌は、高頻度に高インスリン血症を合併している。一方、tuberinはTSC2遺伝子によってコードされる分子であり、最近の研究結果より細胞増殖を制御するインスリン情報伝達経路の1分子であることが解明された。本研究の目的は、高インスリン血症およびtuberinの肝発癌における細胞生物学的意義を明らかにすることである。昨年度、我々は、インスリンが肝癌細胞株(HepG2, Huh-7, Hep3B)のtuberinのリン酸化を誘導し、mammalian target of rapamycin(mTOR)を介した細胞増殖に関与する事を明らかにした。本年度、我々は、ヒト肝癌切除組織を用い、tuberinのリン酸化と術前のインスリン値およびインスリン抵抗性の関連につき検討した。抗tuberin抗体および抗リン酸化tubelin抗体を用いた免疫組織化学およびウエスタンブロッティング法により、非癌部組織と比較し、ヒト肝癌組織ではtuberinの発現に変化は認めないものの、リン酸化tubelinの発現亢進を認めた。また、術前の空腹時インスリン値とインスリン抵抗性の指標であるhomeostasis model assessment for insulin resistance(HOMA-IR)は肝癌組織におけるtuberin活性と有意な相関を認めた。リン酸化tuberinはmTORシグナル系による癌の増殖に深く関わると考えられる。本年度の研究により、培養細胞を用いた研究だけでなく、臨床的にも高インスリン血症を特徴とする2型糖尿病患者の肝発癌機序にtuberinが深く関与することが明らかとなった。
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