Research Abstract |
本年度は,既知および未知生理活性物質の代謝制御因子としての作用を検討するため,以下の検討をおこなった。メタボリックシンドロームは,内臓脂肪型肥満に加え,糖代謝異常,脂質代謝異常,高血圧といった動脈硬化危険因子をもっ病態であり,脂肪組織を含む全身の血管内皮機能が障害された状態と考えられる。一方,脂肪組織は多くの生理活性物質(アディポサイトカイン)を産生する内分泌器官であり,アディポサイトカイン産生調節機構の破綻がメタボリックシンドロームの発症に関与するとされている。そこで,メタボリックシンドロームにおける脂肪組織の血管内皮機能障害に着目し,血管内皮細胞と脂肪細胞の共培養系を確立し,脂肪における生理活性物質を含む液性因子を介した血管内皮細胞と脂肪細胞の相互作用に関し検討を行った。トランスウェル法により3T3-L1脂肪細胞とMSS31血管内皮細胞を共培養したところ,血管内皮細胞数に比例して培養上清中の遊離脂肪酸(FFA)濃度は有意に増加した(P<0.01)。DNAチップを用いた共培養及び飽和脂肪酸であるパルミチン酸添加によるMSS31の遣伝子発現解析では,多くのサイトカイン、ケモカインを含む受容体結合蛋白・ペプチド遺伝子(共培養68個,パルミチン酸51個)が単独培養と比較し強発現(>1.5倍)していた。レポーターアッセイによる解析から,共培養及びパルミチン酸添加は血管内皮細胞におけるNFkB活性を有意に増加させた(P<0.05)。共培養,パルミチン酸添加共に遺伝子発現が増強していた候補アディポサイトカインを3T3L1に添加したところ,培養上清中のFFA濃度は濃度依存性に増加した(P<0.001)。血管内皮と脂肪細胞の共培養により,1)脂肪細胞における脂肪分解の促進,2)FFAによる」血管内皮細胞の炎症性変化が認められた。また,共培養による脂肪分解に血管内皮細胞由来アディポサイトカインが関与する可能性が示唆された。
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