2008 Fiscal Year Annual Research Report
WT1遺伝子発現異常による造血幹細胞への影響と白血病発症に関した分子生物学的解析
Project/Area Number |
19790668
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西田 純幸 Osaka University, 医学系研究科, 寄附講座助教 (00403189)
|
Keywords | WT1 / 白血病 / 造血幹細胞 |
Research Abstract |
造血細胞にWT1遺伝子を持続高発現するトランスジェニックマウスを用いた造血幹細胞の解析 WT1トランスジェニックマウスの骨髄細胞を用いWT1遺伝子の造血幹細胞・前駆細胞における細胞周期または細胞増殖への影響を以下の解析を行い評価した。 (1) cobble stone area fbrming cell(CAFC)assayは、骨髄細胞と骨髄間質細胞を共培養し、造血前駆細胞・幹細胞の中・長期的な増殖を評価できる。CAFC assayを行いWT1遺伝子の造血幹細胞・前駆細胞の増殖に与える影響をin vitroで評価した。その結果、WT1トランスジェニックマウス由来の骨髄細胞でCAFCは統計的有意差をもって増加し、WT1遺伝子高発現による増殖促進作用が示唆された。 (2) WT1遺伝子の造血幹細胞・前駆細胞の細胞分裂に与える影響をin vivo CFSE proliferation assayで評価した。CFSEでラベリングされた細胞は1回の細胞分裂毎にCFSEの蛍光強度は減少する特性を用い、WT1トランスジェニックマウス由来の骨髄細胞をCFSEでラベリングし、放射線照射により造血を破壊した同系マウスに骨髄移植を行い、移植後早期における細胞分裂の頻度を解析した。その結果、WT1トランスジェニックマウス由来の骨髄細胞で造血幹細胞・前駆細胞を多く含むより未熟な細胞集団において、CFSE蛍光強度の低い集団、つまり、細胞分裂が多く認められた細胞集団が、野生型マウスに比して統計的有意差を持って増加していた。この結果は、WT1遺伝子の持続高発現により、造血幹細胞・前駆細胞め細胞分裂が促進されたことを示唆するものである。 WT1遺伝子を持続高発現する造血幹細胞・前駆細胞の細胞増殖・分裂が促進されることがin vitro並びにin vivoの系で明らかとなった。WT1遺伝子の発現により造血幹細胞・前駆細胞の増殖が促進し、さらに付加的遺伝子異常が加わることで白血病が発症するという我々の仮説を支持する結果であり、WT1遺伝子の発現異常が白血病発症に深く関わっていることを強く示唆すると共にWT1遺伝子を用いた新たな白血病治療戦略に結びつくものと考えられる。
|