2007 Fiscal Year Annual Research Report
慢性骨髄性白血病における低酸素骨髄ニッチ環境由来治療抵抗性の克服
Project/Area Number |
19790674
|
Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
黒田 純也 Kyoto Prefectural University of Medicine, 医学部附属病院, 専攻医 (70433258)
|
Keywords | 慢性骨髄性白血病 / Bcr-Ab1 / 低酸素 / 骨髄ニッチ / 解糖系 / Glyoxalase-I / チロシンキナーゼ阻害剤 / 分子標的治療 |
Research Abstract |
慢性骨髄性白血病(CML)はBcr-Ablチロシンキナーゼの異常活性が病因であり,Bcr-Ablチロシンキナーゼ阻害剤が第一選択治療薬である。しかし,これらの治療によっても完全なCML細胞の根絶はいまだに困難であり,薬剤抵抗性メカニズムとその克服法の解明は喫緊の課題である。CML(幹)細胞は生体内では骨髄ニッチに存在し,各種の細胞ストレスから庇護されつつ,自己複製と分化・増殖を維持しているが,骨髄ニッチ領域は他の領域と比べ解剖学的に低酸素濃度状態にあると想定されている。CML(幹)細胞や骨髄ストローマ細胞の細胞形質,それらの接着能や遊走能,ケモカインの産生や分泌などに関わる各種の細胞内シグナル伝達が低酸素状態による特有の制御を受けている可能性が考えられ,Bcr-Ablチロシンキナーゼ阻害剤など治療薬に対する抵抗性獲得との関連も推測される。そこで,われわれは低酸素のCML細胞の形質や治療反応性に与える影響を検討した。平成19年度の研究により,マウスに移植されたヒト由来CML細胞は,マウス骨髄内にびまん性に浸潤し,実際に酸素濃度1%以下の極めて低酸素状態で増殖していること,in vitro低酸素培養系においてはCML細胞は,解糖系でのエネルギー産生により依存した状態で生存,増殖していること,Glyoxalase-Iなどの解毒酵素活性亢進によって解糖系毒性を回避し低酸素環境に適応していることが明らかになった。また,重要なことに低酸素状態でCML細胞はBcr-Ab1チロシンキナーゼ活性への依存性が低下していること,低酸素適応CML細胞株は親株(定常酸素濃度下)に比較してBcr-Abl阻害剤など治療薬に対して抵抗性となることが明らかになった。骨髄低酸素状態のCML治療への影響を明確にした研究はこれまでになく,今後の分子標的治療開発に向け,極めて重要な知見を得たものと考える。
|