2007 Fiscal Year Annual Research Report
神経芽腫幹細胞の同定とBcl-2阻害剤およびRA誘導体による新規治療法の開発
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19790707
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
新妻 秀剛 Tohoku University, 病院, 助教 (30392252)
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Keywords | 神経芽腫 / レチノイン酸 / アポトーシス / 分化誘導 / Bc1-2 / Akt |
Research Abstract |
人体に低毒性でありながら神経芽腫(NB)に対する抗腫瘍活性を有するレチノイン酸(RA)は、多くのNBに対して分化を誘導するが、一部ではアポトーシスを誘導して強い腫瘍抑制効果を示す。我々は2006年に以下の事を報告した:(1)RAによるアポトーシスは、抗アポトーシス蛋白Bcl-2が少ない一部のNBで誘導され、Bcl-2が高発現のNBは分化する。 (2)Bcl-2阻害剤HA14-1を併用するとBcl-2高発現の場合でもアポトーシスが誘導される。つまりBcl-2は、多くのNBが持つ、アポトーシス反応に対するブレーキの役割を持つと言える。そこで、実験動物や人体に投与可能とされる新規Bcl-2阻害剤、ABT-737を用いる実験を計画したが、米国Abbott本社との本試薬提供契約の最終段階で、我々の実験系で用いるNB細胞株の使用許諾条件(非商業的利用に限る)がネックとなり入手できなかった。このため、アポトーシス反応のブレーキを壊す(Bcl-2阻害剤)実験だけでなく、RA投与後のアポトーシス反応のアクセルとなる可能性のある様々なシグナル伝達経路を解析する実験を行った。こうした経路の代表としてAkt経路および3種のMAPキナーゼ経路(ERK、 JNK、 p38MAPK)が挙げられる。RA処理した4つのNB細胞株(アポトーシスする2株と分化する2株)の蛋白を用い、上記4種のシグナル経路のリン酸化による活性化をウエスタン法で比較すると、Akt経路は分化する細胞株のみで強く活性化され、JNKはアポトーシスする株で活性化された。ERKは全ての株で活性化され、p38MAPKはいずれの株でも活性化されなかった。ここでAkt、 ERK、 JNK各経路のリン酸化阻害剤を用いてそれぞれのシグナルを止める実験を行った。いずれもRAによるアポトーシスには影響を与えなかったが、分化する株で活性化していたAkt経路の抑制によって、RAによる分化誘導作用が減弱した。 今回の解析では、NBにおけるシグナル伝達経路のうち、RAによるアポトーシス誘導に重要な経路は発見されなかったが、分化誘導にはAkt経路の活性化が重要である事が見出された。
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