2008 Fiscal Year Annual Research Report
シルバーラッセル症候群および子宮内発育遅延に関する分子遺伝学的解析
Project/Area Number |
19790752
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Research Institution | National Research Institute for Child Health and Development |
Principal Investigator |
山澤 一樹 National Research Institute for Child Health and Development, 小児思春期発育研究部, 共同研究員 (10338113)
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Keywords | インプリンティング / エピジェネティクス / シルバーラッセル症候群 / 成長障害 / 人類遺伝学 / 先天奇形症候群 / 胎盤 |
Research Abstract |
平成19年度から継続して、シルバーラッセル症候群(SRS)患者60例を対象として、白血球および胎盤を用いてH19-DMRのメチル化状態を解析し、IGF2とH19の発現解析を行った。また個体および胎盤の表現型を比較検討した。 メチル化解析の結果、SRS60例中20例に低メチル化エピ変異が同定された。メチル化パターンは白血球と胎盤とで類似性が認められた。発現レベル解析の結果、胎盤ではIGF2の発現量はエピ変異陽性群において有意に低下していたのに対し、H19の発現量はエピ変異陽性群と陰性群で同等であった。H19の発現パターン解析の結果、白血球では、エピ変異陽性群においてはインプリンティングが喪失し両親性発現が認められたのに大使、正常対照においては母性発現が認められた。一方で胎盤では、エピ変異陽性群と正常対照のいずれにおいても母性発現が認められた。個体の表現型は、エピ変異陽性群で成長障害がより重度であり、SRSの典型的症状を高頻度に呈した。胎盤の表現型は、エピ変異陽性群で絨毛異常を伴う重度の胎盤低形成が認められたのに対し、陰性群では絨毛異常や梗塞像を伴う軽度の胎盤低形成が認められた。またエピ変異陽性群においてメチル化係数と出世維持および現在の体重・身長・胎盤重量との間にそれぞれ相関が認められた。 以上の成績は、(1)エピ変異陽性群の胎盤はIGF2の発現が低下し特徴的な表現型を呈すること、(2)IGF2-H19ドメインのインプリンティング制御に関して白血球と胎盤とで類似点と相違点とが存在すること、(3)IGF2の発現量はエピ変異陽性群での個体や胎盤の成長決定において重要な役割を果たすこと、(4)胎盤機能不全が出生前の成長障害に関与すること、(5)エピ変異陰性群においては未知の(エピ)遺伝子異常や環境因子の影響がSRSの原因となり得ること、を示唆する。
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Research Products
(4 results)