Research Abstract |
乳幼児突然死症候群(SIDS)の遺伝的素因についてはQT延長症候群関連遺伝子の異常が注目され報告もなされているが, 多くは症例報告もしくは一遺伝子を解析したもので, より網羅的な研究結果の蓄積が求められている. 我々は今までの研究において, 日本人SIDS42症例を対象とし, QT延長症候群の主要原因遺伝子(KCNQ1, KCNH2, SCN5A)について解析し, 4症例(約10%)に5つの遺伝子異常を検出した. この結果をふまえ, 引き続き検出した遺伝子変異について発現実験により機能解析を行い, これらの変異とSIDSとの関連について再検討した. 【方法】KCNQ1, KCNH2, SCN5Aについて, cDNAやcRNAを用いて, カエルの卵細胞や哺乳動物細胞における発現系を確立し, 電気生理学的特性を調べた.検出したKCNQ1-K598R, KCNH2-T895M, SCN5A-F1705S, SCN5A-F532C, SCN5A-G1084S変異を導入し, 検索した. 【結果】5つの変異のうち, SCN5A-F1705SおよびKCNH2-T895Mの変異イオンチャネルにおいて正常イオンチャネルと有意に異なる電気生理学的特性が確認された. 【考察】殆どの変異は保存された配列や機能的に重要と考えられるドメインに変異を起こしており, これらの機能解析は, 必ずしも生体内における機能を反映していないと考えられる. しかし, SIDSの病態として, 少なくとも一部には不整脈が関与していることがあらためて確認された. 多くの変異はde novoの変異と考えられるが, 遺伝によるものの存在も予想される. 分子生物学的な解析は, 病因の同定のみでなく, 残された家族の生命を守ることにもなる. SIDSの約10%は, 不整脈との関係が強く考えられ, 更なる解析が求められる.
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