2008 Fiscal Year Annual Research Report
悪性黒色腫の進展、転移のメカニズムーケモカイン受容体の制御因子に関する研究
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19790774
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柿沼 誉 The University of Tokyo, 医学部附属病院, 講師 (30332604)
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Keywords | 悪性黒色腫 / ケモカイン / beta-7インテグリン |
Research Abstract |
今年度は悪性黒色腫の局所での成長にどの因子が関与しているか、宿主面からのアプローチを行った。以前我々はマウスB16メラノーマ細胞にレトロウィルスのempty vectorを組み入れ、その細胞をB6マウスの耳に皮下注すると、腫瘍の成長が抑制され、一方、ウィルスを組み込まないB16細胞を耳に注射すると約2週間で4mm大の腫瘍の発育がみられることを報告した。このことから、empty vectorを組み入れたB16に対し、宿主側が免疫学的応答を有していると推測された。この結果を踏まえて、我々はT細胞のホーミングに関係しているインテグリンに注目した。beta-7インテグリンは腸管でのT細胞のホーミングに重要な接着分子であることは以前から知られているが、最近我々の検討では皮膚での接触皮膚炎反応の程度にも関与していることが明らかになってきた。今回、我々はB6マウス、beta-7インテグリンノックアウトマウスの耳にempty vectorを組み入れたB16メラノーマ細胞を皮下注し、腫瘍の成長を観察した。約3週間後、B6マウスの耳では2/10匹で肉眼的な腫瘍形成を認めたのに対し、beta-7インテグリンノックアウトマウスでは8/10匹において明らかな腫瘍の形成を認めた。組織学的に前者が腫瘍内に著明なリンパ球浸潤を認めたのに対し、後者では腫瘍内に浸潤したリンパ球がほとんど認められず、腫瘍周囲にリンパ球、好中球の浸潤を認めたに過ぎなかった。またこの腫瘍細胞を各々のマウスの足底、腹部皮下に注射しても、beta-7ノックアウトマウスでは、著明な腫瘍の成長を認めた。一方、このB16メラノーマ細胞をマウス尾静脈から注射し、肺転移の差を検討したが、両者において明らかな転移の差を認めなかった。以上より、メラノーマの皮膚での成長にはbeta-7インテグリンは重要な役割を果たしていると考えられた。
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Research Products
(3 results)