2008 Fiscal Year Annual Research Report
生体肝移植における生体ドナーの精神状態に関する研究
Project/Area Number |
19790815
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
林 晶子 Kyoto University, 医学研究科, 助教 (70378636)
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Keywords | 精神病理学 / 移植外科学 |
Research Abstract |
平成19年7月より生体肝移植術における生体ドナーに対する術前の精神医学的面接、心理テストの実施を開始した。平成20年3月までに緊急手術により心理テストの施行ができなかった1例を除く54例のドナーより研究の協力が得られた。前回我々が行った研究(Transplantation 2007 ; 84 : 1255-1261)では回収率が73.6%であったことに比し、今回はほぼ100%に近い良い回収率が得られている。いずれのドナーも1時間30分ほどを要して精神科医による半構造化面接を行い、レシピエントとの関係、ドナーになるに至った動機・過程・葛藤の有無、手術に対する不安について聴取するとともに、CMI健康調査票(身体状態)、SF-36(身体状態のQOL)、TAS-20(アレキシサイミア)、STAI(不安)、BDI(抑うつ)に関する心理テストを施行した。心理テストの結果では、STAI-S(状態不安)の結果が平均46.6(±11.0)、STAI-T平均39.3(±11.6)、(BDI(抑うつ)平均7.5(±8.67)となった。状態不安、抑うつに関しては以前の研究の結果よりも有意に高い値であり、本研究では精神科医による面接を病室ではなく精神科診察室で行っていること、手術の前日ではなく、ドナー候補として確定して間もなく行っているという状況などが関与していると思われる。CMIの結果では身体状態がBDIと相関するというデータが得られ、身体症状がうつ病の身体症状であるとした仮説を裏付けるものとなった。SF-36、TAS-20に関しては、詳細な解析を行っているところである。半構造化面接の結果得られたドナーになる動機・過程・葛藤の内容が前回よりも多岐にわたるため、引き続き症例を集めて質的な解析も検討する必要があると思われる。また第10回アジア移植学会、第16回ヨーロッパ精神医学会に出席し、移植医療・リエゾン精神医学の最新の知見を得ることができた。
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