Research Abstract |
胎児性アルコール症候群(FAS)に対して, 経静脈的神経幹細胞移植を行い, 多動性と衝動性といったFASの行動異常が正常ラットと同等の程度まで改善することを報告した。また胎児期のアルコール暴露が脳に及ぼす影響は, 出生してアルコール暴露が断たれても基本的に非可逆的であり, また様々な精神疾患への罹患が高いことも知られており, 我々は既に, 胎生期にアルコール暴露を受けたFASモデルラットから得た神経幹細胞は, 通常の神経幹細胞よりもアルコールによる障害を受けやすいことを見出し報告している。さらに, 精神疾患における脳ダメージからの回復とその予防・治療法の開発検討を進める目的で, FASのモデル動物に標識した神経幹細胞を移植し, 神経幹細胞の脳内動態の可視化を図るとともに, 移植した細胞が, 脳のどこでどんな細胞に分化・発達しているのかについて解析を進めた。FASのモデルラットの生後1ヵ月目に蛍光色素(CFDA-SE)で標識した神経幹細胞を経静脈的に移植し, 移植2ヶ月後に脳組織標本を作製した。移植した細胞は脳内に広範に分布しており, 免疫染色にてMAP2やdreblin A, GFAP陽性であり, 樹状突起を形成したニューロンやアストロ細胞に分化し生存していることを観察した。また5-HTやGAD, ChAT陽性の細胞も認め, ニューロンに分化した移植細胞がさまざまなフェノタイプの神経細胞に分化, 発達していることが分かった。今後, 移植細胞の機能発現を電気生理学的に解析するなどして, その脳神経回路への組み込みについて詳細な解析を進めていきたいと考えている。
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