2007 Fiscal Year Annual Research Report
ドーパミン神経を介した後シナプス細胞へのニコチン、エタノールの作用
Project/Area Number |
19790833
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
井上 雄一朗 Nara Medical University, 医学部, 助教 (40326343)
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Keywords | 薬物依存 / ニコチン / ドーパミン / アデノシン / 腹側被蓋野 / 側座核 / cyclic AMP / G蛋白質 |
Research Abstract |
(目的)タバコおよびアルコールは最も広く使用されている依存性薬物の一つであり,悪性腫瘍,循環器疾患,消化器疾患合併の危険を増す。関連する医療費は年間1兆円を超すため,予防並びに禁煙治療が重要となり,その生物学的機序の解明が治療につながる可能性がある。依存性薬物の共通のメカニズムとして,脳内報酬系と呼ばれる腹側被蓋野(VTA)から側座核(NAcb)に投射するドーパミン(DA)作動性A10神経に作用して,NAcbでのDA放出の増加が言われている。研究代表者が確立したVTAとNAcbの神経細胞共培養系を用いると依存性薬物のVTA細胞への作用,放出されたドーパミンのNAcb細胞への作用を観察することができるためこれを用いて研究を行っている。(方法)妊娠17日目の母ラットより取り出した胎児脳を用いNAcb,VTA,NAcb+VTAの神経細胞初代培養を行い,培養14日目に様々な濃度のニコチン単独と各種濃度のエタノール単独,または両者を組み合わせて各細胞を刺激した。(結果)ニコチン単独またはエタノール単独で作用を示さない3μMと25mMを組み合わせると,NAcb+VTAにおいてのみCRE-luciferase活性の上昇が見られ,ドーパミンD2受容体遮断薬またはアデノシンA2a受容体遮断薬の前処置で遮断され,両受容体の働きを要すると考えられる。免疫染色にてリン酸化CREBとmu-オピオイド受容体の共染色を認め,上記の受容体拮抗薬やPKA阻害薬,Gβγ阻害薬で阻害された。(意義および重要性)低濃度のエタノールとニコチンの併用で側座核の神経細胞に細胞内シグナルの変化や遺伝子発現を誘導することから,アルコールとタバコの共依存をもたらすメカニズムの一つとして意義かあるかもしれない。単回刺激による実験であるため,現在各薬剤で前処置した細胞に新たに刺激を加えた際の変化を見る研究を遂行している。
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