2008 Fiscal Year Annual Research Report
ドーパミン神経を介した後シナプス細胞へのニコチン、エタノールの作用
Project/Area Number |
19790833
|
Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
井上 雄一朗 Nara Medical University, 医学部, 学内講師 (40326343)
|
Keywords | 薬物依存 / ニコチン / ドーパミン / アデノシン / 腹側被蓋野 / 側座核 / cvclic AMP / G蛋白質 |
Research Abstract |
目的)タバコおよびアルコールは依存性薬物の一つであり、多彩な合併症をもたらし、関連する医療費は年間1兆円を超すため、予防並びに禁煙治療が重要であり、その脳内での生物学的機序の解明が治療につながる可能性がある。依存性薬物のメカニズムとして、脳内報酬系の腹側被蓋野(VTA)から側座核(NAcb)に投射するドーパミン(DA)作動性A10神経に作用して、NAcbでのDA放出の増加がある。また、タバコの依存性はニコチン受容体(nAChR)の脱感作も影響していると考えられる。H20年度も研究代表者が確立したVTAとNAcbの神経細胞共培養系を用いて引き続き研究を行った。(方法)胎生17日目のラット脳のNAcb、VTA、NAcb+VTAの神経細胞初代培養を用い、培養12-3日目に36時間ニコチンで刺激し(CHR)、12時間ニコチンを含まない培地に交換する(W/D)。14日目にニコチンとエタノールを単独、または組み合わせて各細胞を刺激した(CHA)。(結果)CHR刺激ではニコチン使用群の方がLuciferase活性(Luc)が対照群に比べて低い傾向があり、W/DではLucは対照群と差がなく、CHAにて前処置群は非前処置群と比べてLucが高値であり、CHA時のニコチン濃度に依存するが、CHR時のニコチン濃度とは相関がなかった。CHA時のエタノール単独およびエタノールとニコチン併用群はLucに統計学的有意差は得られなかった。(意義および重要性)ニコチンの36時間刺激によるニコチン群のLuciferase値の低下はnAChRの脱感作による神経終末からのDA放出低下が、12時間離脱後の再投与によりニコチン前処置群でニコチン再投与でLuc値が上昇しており、慢性ニコチン投与で細胞内の神経伝達系に慢性的な変化が生じたものと考えられる。CREBのリン酸化の変化を今後見たり、tyrosine hydroxylaseの発現量、リン酸化、細胞外のDA量の測定等を今後行う予定である。
|