2007 Fiscal Year Annual Research Report
統合失調症の聴覚言語処理機構に関する脳画像・遺伝子研究
Project/Area Number |
19790840
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
肥田 道彦 Nippon Medical School, 医学部, 助教 (60434130)
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Keywords | 脳機能画像 / 統合失調症 / 聴覚言語処理 / 大脳半球左右差 / 遺伝子多型 |
Research Abstract |
われわれは、聴覚言語処理研究の一貫として、本年度は、声に含まれる感情の認知に関する脳機能画像研究をおこない、健常対照群と統合失調症群の脳活動の相違の検討をおこなった。近年の認知心理学的研究は、音声に含まれる個性や感情を認識したとき右側頭葉が賦活されることが示されているが、相手の音声を聴いて、その音声に含まれる情報から相手の感情を察知しているときの脳機能を研究した報告はない。そこでわれわれは、音声から相手の感情を認知するときの脳機能について検討した。まず、感情をもった声の題材を収集し、感情尺度を用いて30人の被験者に評価し、刺激課題を作成した。次にその声を用いてMRI撮像時に16名の健常対照群に対して、20秒間ずつ交互に好意的(Positive)・非好意的(Negative)・どちらでもない(Neutral)あいさつを受動的に聴取させ、脳活動を検討した(実験1)。また、18名の健常対照群に対して、2つのあいさつのどちらが好意的かを判断させたときの脳活動を検討した(実験2)。実験1・実験2ともに両側右上側頭回前部と扁桃体を中心に確認することができた。さらに実験2に関連して統合失調症18症例の脳活動を健常対照群と比較検討したところ、疾患群では右半球の活動が低下し、幻覚妄想の重症度と左半球の脳活動が正の相関を示した(実験3)。これら実験1〜3の結果について学会で報告した。統合失調症症例で感情の認知に関わる聴覚言語処理時の脳活動の半球優位性が変化するという所見は、臨床診断に役立つことが期待される。また現在、脳機能画像の結果に関連して、特定の遺伝子多型(SNPs)を用いて統合失調症群でどのような遺伝学的背景が影響しているか検討をすすめている。
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