2008 Fiscal Year Annual Research Report
双極性障害モデル動物を用いた新規気分安定薬候補物質の検討
Project/Area Number |
19790844
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
窪田 美恵 The Institute of Physical and Chemical Research, 精神疾患動態研究チーム, 研究員 (90344035)
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Keywords | mitochondria / polymerase γ / cyclophilin D / cycrosporin A / permeability transition pore |
Research Abstract |
双極性障害モデル動物として脳内mtDNA変異蓄積マウスを用い、ミトコンドリアのCa^<2+>制御異常に着目して解析してきた。これまでに変異マウス脳からの単離ミトコンドリアを用いて、Ca^<2+>取り込み速度亢進が観察された。 mPTPの構成タンパク質であるシクロフィリンD(CyP-D)を阻害するシクロスポリンAによって、野生型マウスミトコンドリアのCa^<2+>取り込み能亢進が確認されたこと、またTgマウス脳ではCyP-D遺伝子発現が低下していたことから、Tgマウスミトコンドリアで観察された取り込み亢進はmPTP阻害を介している可能性が示唆された。この分子機構とTgマウスで観察された異常行動との関連について調べるため、CyP-D阻害剤の輪回し行動に対する影響を検討した。CyP-D阻害剤をTgマウスに約2週間、連続的に腹腔内投与し、輪回し行動を観察した。シクロスポリンAは脳血液関門を通過しにくいことが知られているため、ミトコンドリアにより特異的に作用し、脳血液関門を通過しやすい性質を持つ類似薬を用いた。これまでにTgマウスでは、明期の初期3時間以内の行動量が、野生型に比べて多く観察され、昼夜の転期時の行動量に異常が見られている。今回の結果でも、溶媒投与群ではこの異常が観察されたが、同腹TgマウスのCyP-D阻害剤(40mg/kg)投与群では約1週間後からこの異常は徐々に減少し、2週間後には有意に減少した。よってCyP-D阻害剤が異常行動に対して抑制効果を持つことが示された。ミトコンドリアCa^<2+>取り込みを制御するCyP-Dと行動異常の関連が示唆されたことから、ミトコンドリア機能を標的とした薬剤が、新たな奏効機序を持つ気分安定薬候補物質になる可能性が考えられた。
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