2008 Fiscal Year Annual Research Report
バイスタンダー効果の抵抗性因子を標的とした殺腫瘍細胞効果の増強に関する研究
Project/Area Number |
19790870
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
菓子野 元郎 Kyoto University, 原子炉実験所, 助教 (00437287)
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Keywords | バイスタンダー効果 / 細胞死 / DNA二重鎖切断 / 細胞遊走 |
Research Abstract |
放射線照射細胞においてバイスタンダー効果による細胞死、増殖抑制などが知られている。照射後の細胞間または細胞内シグナル伝達経路において、バイスタンダー効果の発現を抑制する因子の存在があるならば、その因子を抑制することでバイスタンダー効果による細胞死を大きくできるのではないかと考えた。バイスタンダー効果を抑制する因子(抵抗性因子)として、HSP90とTGF-betaをあげた。今年度の目標は、これらの因子を阻害した際、バイスタンダー効果が大きく現れるか否かを検討することであった。SPring-8放射光施設において、スリット照射を受けた細胞集団におけるバイスタンダー効果を調べた。このスリット照射は25ミクロン幅のサイズで照射するものであるが、細胞の被ばく線量をリン酸化H2AXの蛍光強度で評価したところ、スリット照射部位では線量依存的にリン酸化H2AXの蛍光強度が増加し、それ以外の領域でもリン酸化H2AXの蛍光はみられ、散乱X線の影響を受けていることが示唆された。このような条件下でラットグリオーマ細胞に対し25ミクロン幅、200ミクロン間隔で4本スリット照射し、24〜48時間後のバイスタンダー効果を調べた。その結果、照射部位に沿って、バイスタンダー効果による細胞の集積が観察され、バイスタンダー因子により細胞遊走が促された可能性が示唆された。この効果に関わる因子の影響を調べるため、同条件で照射24時間後の培養上清を非照射細胞へ処理したところ、53BP1フォーカスの平均値は増加した。このことから、照射細胞から分泌された何らかの因子は細胞遊走の誘発、及びDNA二重鎖切断の誘発を引き起こすことが示唆された。抵抗性因子としてのTGF-betaの影響について、中和抗体を処理することにより調べたが、顕著な抑制または増強効果はみられず、さらなる解析が必要であると思われる。
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