2008 Fiscal Year Annual Research Report
食道癌における発癌/抑制に関与するmicroRNAの同定とその機能解析
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19790920
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
伊藤 佐智夫 Okayama University, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (30335624)
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Keywords | 食道癌 / microRNA / 癌遺伝子 / 癌抑制遺伝子 |
Research Abstract |
本研究では食道癌におけるmiRNAの発現パターンを解析し、死亡率の低減を目指すための予防や早期発見法への応用、さらには食道癌の発癌または癌抑制に関与するmiRNAを同定した上で機能解析を行い遺伝子治療への応用を目的とし、食道癌患者3検体の腫瘍細胞(T)と正常細胞(N)から抽出したRNA、および分化度の違う食道癌9細胞株(高中低分化型3種類ずつ)RNAを用いてmiRNA(787種類)の比較解析をそれぞれ行った。その結果、臨床検体においては腫瘍細胞に共通してmiR92a-2*, miR155*, miR193b*, miR508-3pが増加し、miR142-3p, miR150, miR380, miR140-3p, miR886-3pが減少していることが分かった。食道癌9細胞株の比較では、同一分化型間でもmiRNAの発現パターンが異なっていることが確認された。また高分化型に対して中分化型と低分化型の比較では、中分化型においてlet7b, miR29a, miR196a, miR9, miR9*, miR148b, miR335, miR422a, 29b-2*が、低分化型においてlet7b, miR23a, miR29a, miR96, miR98, let7i, miR23b, miR339-5p, miR660, miR92-2*, miR520c, miR1225-5pが高発現していた。この結果からlet7b, miR29aが悪性度に影響している可能性が考えられた。これらのmiRNAとLOHおよびCGHとは優位な相関が見られなかった。このことから染色体異常ではなく、これらの変動しているmiRNAが食道癌発生に関与していると考えられる。これらmiRNAの標的遺伝子をバイオインフォマティクスにおいて検索すると、1つのmiRNAに対して数千もの標的遺伝子候補が挙げられる。 これらの候補遺伝子すべてについて機能解析を行うのは非現実的であると考えたので、実際にmiRNAと物理的相互作用をしている標的遺伝子を捕まえる方法を考える必要がある。 現在、Ago抗体あるいは化学修飾したmiRNAを用いたpull-down法、またmiRNAを細胞に導入し発現変化の見られるタンパク質の質量分析によって候補遺伝子を探索する試みをしている。
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