2008 Fiscal Year Annual Research Report
膵臓癌のエピジェネティックな分子病態の解明と治療的アプローチ
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19790945
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
渡邉 すぎ子 Kumamoto University, 発生医学研究センター, 助教 (10433012)
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Keywords | HMGA / 膵臓癌 / 上皮間葉転換 / エピジェネティクス |
Research Abstract |
通常では発生過程の未分化細胞や幹細胞で高く発現する構造的クロマチン因子high mobility group Aタンパク質(HMGA)が、多くの癌で再活性化し癌化や転移能にそのエピジェネティックな機能をとおして作用するとされる。本研究では、膵臓癌におけるHMGA2タンパク質の癌特性への役割として、細胞接着因子E-cadherinの発現抑制性転写因子SNAILのプロモーターに結合しその発現を活性化することで、転移に有利となる間葉系細胞の表現型維持に作用することを見いだした。さらに治療的アプローチの観点から、膵臓癌におけるmicro RNAによるHMGA2遺伝子発現制御を解析した。 1. 具体的内容 : 膵臓癌細胞株においてHMGA2ノックダウンにより、細胞増殖能は低下し、E-カドヘリン発現上昇を伴う高接着性の上皮様に変化した。実際膵臓癌組織において、E-カドヘリンとHMGA2の発現は逆相関する。HMGA2はE-カドヘリンの発現を抑制する転写因子SNAILのプロモーターに作用し、発現を促進する。また、膵癌細胞株をRAS経路阻害剤(U0126)で処理すると、HMGAの発現低下を伴う上皮様の変化を認めた。U0126処理によりSNAILの発現は抑制されるが、これはHMGA2の安定的過剰発現により無効となる。また、HMGA2はlet-7microRNAファミリーの標的となっているが、let-7過剰発現による表現型の変化はみられなかった。 2. 意義 : 膵癌細胞では、変異型RAS経路の下流として、HMGAタンパク質が増殖能とEMTの維持に必要であることを示した。 3. 重要性 : HMGA2を標的とすることで、膵臓癌転移の分子機構に重要な上皮間葉転換を阻害する新たな治療の可能性が期待できる。
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Research Products
(3 results)