2008 Fiscal Year Annual Research Report
放射光X線回析法による心筋クロスブリッジ動態解析-不全心のナノ診断から治療評価へ
Project/Area Number |
19790976
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
田村 大和 Nara Medical University, 医学部, 研究員 (20382301)
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Keywords | 化学物理 / 加速器 |
Research Abstract |
本研究はSPring-8を用いて分子ナノオーダーのダイナミクスを観察することにより心不全を診断する方法の開発を目的とした。特に心筋の収縮タンパクに注目し、複雑な形態と多重の代償機構を保持した標本(生体位全心臓標本)ならびにその破綻を来した心不全モデル標本を用いてアクチン・ミオシンの相互作用(クロスブリッジ動態)とミオシン線維格子間隔の変化を解析した。 左心室にX線を照射すると二重の円弧〜環状のX線回析が得られる。内側の回折像は1,0赤道反射と呼ばれミオシン線維を、外側の回析像は1, 1赤道反射と呼ばれアクチン、ミオシン両方の線維の情報を反映する。心臓の収縮に伴い、ミオシン頭部がアクチンと結合(クロスブリッジの形成)すると、ミオシン線維による回折像が減少するため、1, 0赤道反射の輝度が低下する。また、収縮によるずれはアクチン、ミオシン両方の線維による回析像である1, 1赤道反射で補正すれば、クロスブリッジの形成・解離動態が観察できる。 また、X線と1, 0赤道反射のなす角度は、X線の波長(0.082nm)とミオシン線維の格子間隔により規定される。試料と撮影管の距離と1, 0赤道反射の出現位置から、ミオシン線維の格子間隔(約35〜40nm)を解析できる。今回の研究のモデルはイソプロテレノールによる肥大心モデルのクロスブリッジ動態解析を行った。現在、収縮期、拡張期におけるクロスブリッジの形成・解離に着目し、解析を進めている。 同時に、ラット摘出ランゲンドルフ灌流心標本にて、心機能評価も行った。心拍数の増加とともにクロスブリッジ形成が減少を来すことや、低酸素環境下ではクロスブリッジ形成の変化を伴わずに、左室発生圧が低下することを確認している。この標本でもイソプロテレンールによる肥大心モデルの測定を行っており、生体位全心臓標本との結果を合わせて解析を行うことで、今後新たな所見が得られると考えている。
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