2007 Fiscal Year Annual Research Report
アセチルコリン受容体における光学活性麻酔薬の作用機構の解明
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19791062
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
尾崎 将之 Shiga University of Medical Science, 医学部, 非常勤講師 (50389459)
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Keywords | 麻酔の作用機序 / 異性体 / 分子シミュレーション / バルビツール / アセチルコリン受容体 / 不斉炭素 |
Research Abstract |
一般に光学異性麻酔薬は異性体間で麻酔の効果が異なると考えられているが、光学異性アルコールの2-ヘキサノール、2-ヘプタノールでは(R)と(S)で差がないという報告がなされた(Anesth Analg 2006 103: 81-84.)。このことから光学異性による麻酔効果の差は必ずしも大きくない可能性が推定された。我々は、計算機を用いた分子シミュレーションにより光学異性バルビツレートのアセチルコリン受容体結合部位を探索し、(R),(S)の結合様式から結合部位における光学異性麻酔薬の分子認識の特性を解明した。また、(R),(S)の結合強度とNa+伝導抑制の関連を調べた。アセチルコリン受容体の構造は2BG9(Protein Data Bank)を用いた。麻酔薬は(R)-pentobarbital((R)-PB),(S)-pentobarbital((S)-PB), barbital(Barb)を用いた。結合探索と結合エネルギーの計算はMOE2007.9(CCG, Canada)で作動するASEDock2005(Ryoka System)を用いた。(R)(S)-PBはいずれも膜界面に接する部位に結合した。Barbは細胞外開口部に結合した。(R)-PBと(S)-PBの結合様式を比較すると、バルビツール酸の骨格構造はほぼ重なり、アルキル部分が重ならなかった。このことから、主たる結合力はバルビツール酸の骨格構造であり、アルキル基部分の結合への寄与は小さいものと推定された。結合エネルギーは、(S)-PB>(R)-PB>Barbの順であった。【考察】光学異性体をもつ麻酔薬の中には不斉炭素から離れた構造が受容体との結合に深く関与するものがあり、それらの麻酔薬ではキラリティは麻酔効果に影響しないことが示峻された。
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