2008 Fiscal Year Annual Research Report
分子疫学的・細菌学的エビデンスに基づいた多剤耐性緑膿菌院内感染防止システムの構築
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19791112
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
石井 亜矢乃 Okayama University, 医学部・歯学部附属病院, 医員 (00423294)
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Keywords | 緑膿菌 / 多剤耐性菌 / メタロ-β-ラクターゼ産生菌 / プラスミド / バイオフィルム / 院内感染対策 / 分子疫学 / PFGE法 |
Research Abstract |
平成20年度は、尿路由来MBL産生緑膿菌に着目し、バイオフィルム形成能および耐性遺伝子の伝達性に関する検討を行った。また、パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)法による遺伝子解析を行った。 A県3施設で分離された尿路由来IMP-1型MBL産生緑膿菌75株(1症例1株)、を対象とした。耐性遺伝子の有無はPCR法にて確認した。バイオフィルムアッセイにはマイクロプレートを用い、人工尿中でのバイオフィルム形成能を定量化した。フィルター法による接合伝達実験には、受容菌としてPseudomonas aeruginosa ML5017株、イミペネムとリファンビシン添加の選択培地を用いた。PFGE法は、制限酵素SPe Iを用い、常法により行った。バイオフィルム形成能をOD^<570>値により3群に分類すると、高度形成群OD^<570>≧1 ;35株(46.7%)、中等度形成群1>OD^<570>≧0.5;31株(41.3%)、低度形成群0.5>OD^<570>≧0;9株(12.0%)であった。対象株75株のバイオフィルム形成能は、岡山大学泌尿器科で分離された尿路感染症由来MBL非産生緑膿菌66株に比較して有意に高かった。接合伝達実験では、検討した15株中5株が、比較的高い伝達頻度で、イミペネム耐性を伝達することが明らかとなった。PFGE解析の結果、直接的な交差感染だけでなく、環境中に生息していたMBL産生緑膿菌を介した交差感染の可能性が示唆された。バイオフィルム形成能が高い緑膿菌は、環境中に長期に生息し、プラスミド性遺伝子の伝達により耐性を獲得している可能性がある。MBL産生緑膿菌の伝播・拡散防止のためには、バイオフィルムを形成させないための医療・療養環境の管理が重要である。
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